「広告が効かなくなった」のではない
この10数年、「広告は効かなくなった」「広告の時代は終わった」のような議論はもう当たり前のように語られています。かく言う筆者も、そうした議論に与してきたひとりです。
しかし、よくよく考えると「広告が効かなくなった」のではなく、「効かない広告をつくっている」というのが正しいのです。環境が一変しているのに、従来どおりの広告のつくり方をしている。だから効かない。
昨年上梓した『新トリプルメディアマーケティング』で冒頭から筆者は「テレビCM起点でクリエイティブをつくることはもうおかしい」と断じました(テレビCMのインプレッション数の6割以上が60歳以上に当たっています)。
コミュニケーションは圧倒的に受け手主導になりました。マーケティングにおいても消費者に主導権があり、これは不可逆的なものです。ところが、いまだに送り手に力があるという大いなる誤解(信じたい気持ちはわかるのですが)の上にマーケティングコミュニケーションが実行されています。
昔は「ワンボイス、ワンメッセージ」などと言って、接触する各メディアで共通のメッセージやイメージを展開するのが当たり前でした。しかし、これは誰もがテレビを観ていた時代の考え方です。街中でも店頭でも「テレビでやってたやつね!」となるから、ワンボイス、ワンメッセージで通用していたことに気づくと思います。
テレビを観ない現代の消費者は、CMに出てくるタレントが店頭のデジタルサイネージに映っていても全く反応しません。テレビを真ん中に置いたコミュニケーション設計はずいぶん前に陳腐化しています。
ではどうしたらいいのでしょう。「広告が効かなくなった」のではないということは「効く広告もつくれる」ということです。そのためには、まず「広告会社のOS」をアップデートしなければなりません。
広告会社は「OS」から変えないと意味がない
ここで「広告会社のOS」とは何かを定義しましょう。筆者の定義は以下です。
広告会社のOSとは、その広告会社が、何を価値と定義し、どう意思決定し、どう仕事を分業・評価・再生産しているかを決めている“見えない基本設計”である
もう少し噛み砕くと広告会社のOSとは、以下のような、日々の行動を無意識に支配しているルールセットのことです。人は戦略的に動いているつもりでも、実際には OSで動いています。
- どんな仕事を「良い仕事」と考えるのか
- 何を起点に企画を考えるのか
- 誰の判断が最終決定になるのか
- 成果はどう測られるのか
- 人は何をやると評価され、出世するのか
デジタル部門を作っても、AIを導入しても、KPIを変えても、OSが旧来のままだと、必ず元に戻ります。「広告会社のOSを変えないと意味がない」というのが、筆者の経験則による結論です。
