広告会社OSを構成する5つの中核
従来の広告会社のOSは、次の5層でできています。
1.価値定義OS
- 広告の価値=「露出」「話題化」「受賞」
- 成功=「クライアント満足」「前例踏襲」
2.意思決定OS
- 最終判断は誰か(営業?CD?クライアント?)
- データか、経験か、声の大きさか
3.仕事分業OS
- 営業/プランナー/クリエイティブの分断
- メディアは外注 or 別会社
4.評価・人事OS
- 評価されるのは「案件獲得」「調整力」「根回し力」
- 成果よりプロセス重視
5.学習・進化OS
- 失敗は共有されない
- 成功事例は神話化され、再現されない
さて、今の広告会社は、上記5つの中核を何に向けて最適化しているでしょうか。
はっきり言うと、多くの広告会社のOSは、「テレビCM起点・マス露出最大化時代」に最適化されたものです。それゆえ、SNSやリテールメディア、AIを“新しいアプリ”としてただ追加するという現象が起きてしまいます。しかし、OSが古いため、いずれも部分最適に留まってしまったり、部署間で対立が起きてしまったりして、なかなか進みません。
筆者が提唱している「新トリプルメディア(詳しくは別の機会に説明します)」はOSアップデートの話なのです。
3度のOS乗り換えを経験し、いま「第4のOS」へ
振り返ってみると、日本の広告会社は、これまで3度のOS乗り換えを経験してきました。そして今、「4度目の乗り換え」を迫られています。
第1のOS:新聞・ポスター(〜1960年代)
この時代のOSは「情報伝達」に最適化されていました。コピーとレイアウトがすべてであり、コピーライターが組織の中心にいました。媒体は単なる「情報を載せるための枠」に過ぎず、効果測定などほぼ存在しません。つまり、「伝えたかどうか」だけが価値のすべてでした。
第2のOS:テレビCM・マスリーチ(1970〜1990年代)
この時代の思想は「認知拡大」。テレビCMを起点に、マスへ一斉に届けることが正義とされていました。クリエイティブがヒーローであり、出稿量と話題性がそのまま成果指標となります。日本の広告会社のDNAは、実質的にここで完成したと言ってもいいでしょう。
第3のOS:デジタルによる補助(2000年代〜2020年代前半)
第3のOSは、テレビCMを主役に据えたまま、デジタルを補完的な延命装置として付け足したに過ぎません。デジタル専業部署を作り、KPIを「クリック」や「コンバージョン」に置き換えても、肝心の意思決定OSは第2世代のまま――表側は新しいが、中身が旧世代という歪な構造に、私は長年ずっと違和感を持ってきました。
なぜ今、「第4のOS」が必要なのか? 理由はシンプルで、第2・第3のOSでは、もはや広告としての本来の役割を全く果たせなくなったからです。生活者もメディアも、それらの環境も様変わりしています。
そして、旧OSの致命的な欠陥は「認知を広げれば売れる」「企画は一発勝負の完成品」という過去の前提に縛られている点です。今の現実は、「認知しても買わない」「企画は常時改善が前提」「クリエイティブは固定された完成品ではなく、効果に応じて最適化されるべき“変数”になっている」。第4のOSが前提とする世界観において、広告の定義はこう変わります。
広告とは、メッセージを、個人の状態と文脈に合わせて、継続的に最適化する行為である
