ケータイサービスのユーザー層を新たに定義
そもそも、なぜこのようなサービスが生まれたのか? 荒木さんによると、ケータイ向けのサービスとして利用者層を新たに定義するところからはじめたようだ。
「ケータイサービスはまだまだ便利じゃないと感じていました。逆に、ウェブは便利なサービスがたくさんあったので、もっとケータイのウェブクリエイターがいてもいいんじゃないか? と思ったのです。そこで利用者の生活に近いところでサービスができれば、と考え始めました」
「利用者の生活に近い」、このキーワードから連想したのが自身も体験している「子育て」だった。
「子供のなにげない毎日を夫婦で共有したかったのがきっかけですね。しかし、育児で忙しい妻を見ていると、毎日デジカメで写真を撮ってPCとUSBでつないで、取り込んでアップロードという手間はどうしてもかけられませんでした。そこで、簡単にインターネットに接続する事ができる手段としてのケータイに目をつけたのです。また、ケータイがこのサービスを利用する人達のストーリーにあったデバイスだとも感じました」
「また、地域や主婦向けのコミュニティーサービスの運営経験から、若者世代ではない方々もケータイを多く利用されていることを肌で感じていました。『ケータイ=若者文化』だけではなく、もっと主婦や家族の方々が使えるケータイサービスがあってもよいのではないか」という想いから子育てマイアルバムを作成するにいたったという。
ケータイサービスを作る際のポイント
ケータイサービスを作成するにあたり、荒木氏は下記の点を意識する必要があるという。
「ケータイはウェブ以上にコンセプトをつくらないとうまくいかないんじゃないか、と思うんです。24時間アクセス可能なのでもっと生活のリズムや使っている人を想像しないとPC以上にサービスの成功が厳しいんじゃないか、と。そこをどう表現するかを考えたいです」
ケータイというメディアをゼロベースからニュートラルにとらえ直し、誰が利用者となり得るのか、何が利用者に求められているのか、利用者にとって本質的なサービスとは何かを設計する。
当たり前のように思えるかもしれないが、他のサービスの動向を見ながら既存のサービスの延長で多くのサービスが生まれている現状では荒木さんの試みは非常に新鮮だ。
「明日の広告」という佐藤尚之氏の新書の中では、広告を展開する上でいかに利用者本位のコミュニケーション・デザインを行い、広告メディアをニュートラルにとらえることの重要であるかが書かれているが、荒木さんはそこで書かれていたコミュニケーション・デザインを自然体でこなしていたといえるだろう。