新婚≒大間の本マグロ?
全国の年間婚姻組数は約70万組。これは、国内人口のわずか1.2%にすぎない。そのうえ、結婚式にリピート利用はないため常に新規開拓が必要になる。だが、挙式・披露宴の平均単価は約320万円と1件とれたらデカい。ウェディング業界はまさしく大間のマグロ一本釣りと同じ市場だ。
こうした層を対象に結婚式場情報を提供するWebサイト「ぐるなびウエディング」の運営にあたる舘田氏が、これまで同サイトのアクセス解析を手がける中で得たノウハウをもとに「アクセス解析実施のポイント」を本セッションで語った。
アクセス解析実施のポイント、リアルな接客と同じ思考がCVRを左右する
「まず大事なのは、漫然と解析画面を見て終わるのではなく、『何のためにアクセス解析をしているのか?』という目的意識を常に持つことです。また、ここでは2つの異なった視点が重要になります。1つは『問題発見と目標設定』、もう1つは『日々の進捗管理』です。例えるなら前者は年1回の健康診断、後者は毎日の体重測定といったところでしょうか。つまり、長期的な視点でサイト全体の問題点の洗い出しや、その解決および設定目標達成のための改善・リニューアルを施していくことと、短期間でのページビューの推移や異常値の監視などを併行して行うことで、サイトが常に問題なく効果的に機能できるようになるのです」
では、具体的にどんな項目を主に検証したらよいのだろうか。「生身のお客様相手の接客と同様に考えていけばよい」と舘田氏はアドバイスする。
「まず『集客』です。ユニークユーザー=見込客を、どこからどうやって何人集めてくるかを考えましょう。次は、集まったお客様への『接客』です。ここでのセールストークの順番と内容がよくないと、お客様は帰ってしまいます。直帰率・離脱率が上がってしまうのです。そして最後まで残ったお客様に、どうお買いあげいただくか。セールス用語で言う『クロージング』の良し悪しが、コンバージョン率を左右します。いきなりネット独特の集客テクニックなどと考えるのではなく、リアルでの接客と同じように、お客様の気持ちをつかむには何が必要なのかを順序立ててシミュレーションしてみるのが大切ですね」
また、何も考えずに「とりあえずツールを入れよう」というケースも多いが、舘田氏は感心しないという。
「率直に言って、解析の専門知識のない現場担当者が、ツールだけで問題点を発見するのは困難です。ツールを動かす前に、まずは何が問題なのかを客観的に把握する必要があります。それも、できれば上司や経営層も認識を共有できることが望ましい。担当者一人では、分析結果に願望や思いこみによるバイアスがかかってしまう可能性があるからです」
アクセス解析、実践しておきたい3つのミニヒント
実際にアクセス解析に取りかかろうとする人に、舘田氏はいくつかのミニヒントを提示する。
「1つ目は『過去にさかのぼれない宿命を念頭に置く』です。つまり、後から分析を行う際に必要なデータは、必ず今とっておくことが大事だということです。具体的には、ページを更新したら必ず記録する。これをしないと、後で分析する時に、なぜアクセスに変化が起こったのか分からなくなります。変更履歴は、非公開ブログで記録するのが便利です。また、検索ワードが自然検索経由と広告経由、どちらなのかを区別しておくこと。これを実行すると、意外な“お宝ワード”が発見できます」
2つ目のヒントは『A/BテストでBefore/After比較を行う』こと。これは、効果測定の上で非常に有効だという。
「季節要因やユーザー要因は、刻々と変化していきます。サイトの改善した部分が本当に効果を発揮しているかどうかを検証するためには、改善前と改善後の両方を同じ環境でテストする必要があります。そのための検証環境を常に整えておきましょう」
最後のヒントとして、ネットマーケティングでは軽視しがちな『電話やメールといった経路からのアクセスも含めたトータルな計測』が大事だと舘田氏は指摘する。
「ネットに掲載する問い合わせ電話番号をユニーク化すれば、どの媒体経由で来たかを特定できます。当社でも050で始まる個別電話番号をサイトに掲載して、ネットを見て電話してきた人をカウントできる仕組みを業界で始めて導入しました。またネット上だけでCVが完結しない商品の場合、電話やメールを含めてカウントすることにより、CVまでのプロセスでネットの貢献率がどれくらいかを割り出せるようになります」
アクセス解析というと、とかくツール導入やデータ分析といった目立つ部分に目が行きがちだが、前述のような“健康診断の実施”から“目標の設定”といった下準備を含む地道なステップを踏まえてこそ、確実な成果を得られると舘田氏は語り、セッションを締めくくった。
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