通信販売にはクーリング・オフ制度がない
では、質問者のネットショップオーナーの方の場合を考えてみましょう。ネットショップで行われている商品販売のほとんどは、特定商取引法上の「通信販売」に該当します。下の一覧表をご覧いただければおわかりのとおり、特定商取引法上の「通信販売」という取引内容については、クーリング・オフ制度がありません。そのため、購入者がクーリング・オフを根拠に返品を求めることはできません。
| 法律 | 取引内容 | クーリング・オフ権を行使し得る期間 | 根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 特定商取引法 | 訪問販売 (定義については第2条第1項) |
申込者等が契約の内容を明らかにする書面(又は契約の申込みの内容を記載した書面)を受領した日から起算して8日を経過するまで。 | 第9条 |
| 特定商取引法 | 電話勧誘販売 (定義については第2条第3項) |
申込者等が契約の内容を明らかにする書面(又は契約の申込みの内容を記載した書面)を受領した日から起算して8日を経過するまで。 | 第24条 |
| 特定商取引法 | 連鎖販売取引 (定義については第33条第1項) |
契約の相手方が契約の内容を明らかにする書面を受領した日又は商品の引渡しを受けた日から起算して20日を経過するまで。 | 第40条 |
| 特定商取引法 | 特定継続的役務提供 (定義については第41条) |
特定継続的役務提供受領者等が契約の内容を明らかにする書面を受領した日から起算して8日を経過するまで。 | 第48条 |
| 特定商取引法 | 業務提供誘引販売取引 (定義については第51条第1項) |
契約の相手方が契約内容を明らかにする書面を受領した日から起算して20日を経過するまで。 | 第58条 |
| 割賦販売法 | 割賦販売 (定義については第2条第1項) |
申込者等が契約の内容を明らかにする書面等を受領した日以後において業者から申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げられた日から起算して8日を経過するまで。 | 第4条の4 |
| 割賦販売法 | ローン提携販売 (定義については第2条第2項) |
申込者等が契約の内容を明らかにする書面等を受領した日以後において業者から申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げられた日から起算して8日を経過するまで。 | 第29条の3の3 |
| 割賦販売法 | 割賦購入あっせん (定義については第2条第3項) |
申込者等が契約の内容を明らかにする書面等を受領した日以後において業者から申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げられた日から起算して8日を経過するまで。 | 第30条の2の3 |
| ゴルフ場等に係る会員契約の適正化に関する法律 | 会員契約 (定義については第2条第1項) |
会員が指定役務の内容及び提供時期等を記載した書面を受領した日から起算して8日を経過するまで。 | 第12条 |
| 特定商品等の預託等取引契約に関する法律 | 預託等取引契約 (定義については第2条第1項) |
預託者が預託等取引契約の内容及びその履行に関する事項を記載した書面を受領した日から起算して14日を経過するまで。 | 第8条 |
| 商品投資に係る事業の規制に関する法律 | 商品投資契約 (定義については第2条第1項) |
顧客が商品投資契約等の内容及びその履行に関する事項を記載した書面を受領した日から起算して10日を経過するまで。 | 第19条 |
| 有価証券に係る投資顧問業の規制に関する法律 | 投資顧問契約 (定義については第2条第1項) |
顧客が契約の内容を明らかにする書面を受領した日から起算して10日を経過するまで。 | 第17条 |
| 宅地建物取引業法 | 宅地建物取引 (定義については第2条) |
申込者等が申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について書面で告げられた日から起算して8日を経過するまで。 | 第37条の2 |
| 不動産特定共同事業法 | 不動産特定共同事業契約 (定義については第2条第3項) |
事業参加者が不動産特定共同事業契約の契約の種別等を記載した書面を受領した日から起算して8日を経過するまで。 | 第26条 |
| 保険業法 | 保険契約 (定義については第2条第1項) |
申込者等が保険契約の申込みの撤回等に関する事項を記載した書面を交付された日と申込みをした日とのいずれか遅い日から起算して8日を経過するまで。 | 第309条 |
(内閣府国民生活局/編集『ハンドブック消費者2005』(国立印刷局)75ページより)
本稿中、意見にわたる部分は、筆者個人の見解を示すにとどまり、筆者の所属する法律事務所の意見を表明するものではありません。また、具体的事案により本稿中とは異なる結果が生じる場合があります。
