ミッション:柔軟なチームワークで、次々とユニークなコンテンツを開発
携帯電話の国内普及台数が1億台を突破するなか、加熱するモバイルコンテンツ業界を牽引するのが、携帯SNS「モバゲータウン」でおなじみの「株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)」である。1999年オンラインモール「ビッターズ」の開始から10年。数々のサービスを展開し、市場を魅了してきた背景には、独創的なアイディアを生み出し続ける土壌と、それを実現する技術力があるといわれている。今回は、「モバゲータウン」の開発・運営に携わるポータル・コマース事業部システム部システム開発第一グループの古田さん、武部さん、有澤さんにDeNAのサービス開発の舞台裏を聞いた。
「1日のほとんどの時間を、アイディア出しやプランニングに費やしています。とりあえず作ってみて、自分で使ってみて、試行錯誤していますよ」
こう語るのは、「モバゲータウン」のサービスコンテンツの開発に携わる古田さん。会員数は1,300万人を超え、1日あたりのPV数も5.7億にのぼる人気の理由は、なんといっても、無料ゲームやアバターなどの魅力的なコンテンツにある。果たして、どのようなフォーメーションでサービスを送り出しているのだろうか。
「サービス開始当初は、企画と開発で部署ごとの役割分担があったんですが、最近はその垣根がなくなってきています。企画も開発も、自分が担当したものが実際に利用されるので、ユーザーの皆さんの反応が特に気になるようになりました。評価が悪いと精神的ダメージも大きく(笑)、評判がいいと最高に気分がいいですね」(古田さん)
一方、モバゲータウンのもう1つの収益源となっているのが、スポンサーからの広告出稿である。リンクやバナーといった従来型の広告はもちろん、モバゲータウンのエンターテイメント性を活かしたタイアップキャンペーンに注目が集まっている。そうしたスポンサー関連のコンテンツ企画やシステム開発を手がけているのが武部さんである。
「スポンサー企業様のブランドイメージを担っているだけに、トラブルや不正が絶対におきないよう、細心の注意を払っています。わずかのミスも許されないので、プレッシャーは大きいですね」(武部さん)
スポンサーの意向はもちろんのこと、ユーザーにとって価値となる“楽しさ”を加味して提供する必要がある。そうしたモバゲーならではの広告キャンペーンの在り方として、「コカ・コーラ」や「ナイキ」などと組んだ様々なタイアップ・キャンペーンが各所で話題にもなった。
「タイアップ企画は特に早い段階から、プロモーション部門とのミーティングを行います。キャンペーンを実施するかどうかまだ不確定、という段階でスタートし、消えていくものも少なくありません。ですから、多くの人と協力しながら綿密に準備した企画が、トラブルも遅延もなくスムーズに公開された時の達成感は格別ですね。ちょうど今日もひとつ公開されたんですが、よし、今夜はみんなで飲みに行こうか、と(笑)」(武部さん)
オリジナルのコンテンツとスポンサードコンテンツはサービスの両輪。それぞれを支える古田さんと武部さんが頼りにし、企画が持ち上がってすぐに必ず相談に行くのが有澤さんだ。有澤さんのミッションは、ユーザーの情報やコンテンツのデータが格納されているサーバー群の運用と監視。膨大なデータで構成された「モバゲータウン」のシステムを支える、「縁の下の力持ち」といえるだろう。
「24時間体制でサーバーの監視を行いながら、負荷が一部に集中しないように細かくメンテナンスを行っています。ユーザーコミュニティの様子なども見ながら、できるだけストレスがかからない環境を用意できるよう心がけています。もともとはバックヤードにあたるサーバー管理だけを担当していたんですが、近頃はフロントのサービス開発に参加することもあって、表と裏を行ったり来たりという感じですね」(有澤さん)
システム開発とサーバ運用のつなぎの役目も担う有澤さんの仕事には、こんな苦労があるという。
「真夜中でもサーバーの監視メールがバンバン飛んでくるので、寝不足気味になることも(笑)。どこにいても対応できるよう、ノートPCからリモートでアクセスできる環境を用意しているのですが、以前北海道の実家に帰ったときには電波が届かなくて焦りました」(有澤さん)
一般にゲームなどのコンテンツは頻繁なアクセスがあるため、何かあった時のユーザーの反応も極めて早い。
「なにかトラブルがあると、あっという間にものすごい数のお問い合せが殺到します。もちろんプレッシャーではありますが、たくさんの人に『モバゲータウン』を利用してもらっている証でもあるので、やりがいに感じてもいます」(有澤さん)
3人のお話を聞いていると、企画やプロモーションなど本来は役割を異にする分野にも、システム開発のスタッフが積極的に参加している様子が伺える。担当の領域にこだわらないこの柔軟さは、DeNA開発部門のひとつの特徴のようだ。では、実際の皆さんはどのような1日を過ごしているのだろうか。3人にそれぞれの1日の過ごし方を聞いてみた。(次ページへ続く)