メールでもレコメンデーションの時代に突入
Amazonや楽天も使用するメール配信ASP等のソリューション事業を展開するエイケア・システムズと、レコメンドエンジンを中心としたWebソリューションを提供するゼロスタートコミュニケーションズ。両社は昨年より、共同で新たなメール配信ソリューション「レコメンドメール」に取り組んでいる。
ECサイトでは当たり前のように利用されているレコメンドエンジンだが、メール配信システムと連携することでどのような効果があるのだろうか。エイケア・システムズの代表取締役である有田道生氏と、ゼロスタートコミュニケーションズの専務取締役である伊地知晋一氏に、レコメンドメールについてお話を伺った。
真のOne to Oneメールを実現するレコメンドメールとは?
--まず、両社が共同で取り組んでいるレコメンドメールとは、どのようなものなのでしょうか?
有田:最近はECサイトの利用者がますます増えています。また、ECサイト上ではレコメンドエンジンがかなり用いられるようになってきました。一方、これまでの販促メールでは、一度に配信されるコンテンツは大体一種類、多くても数種類を顧客属性などで振り分ける程度でした。そこで、レコメンドエンジンをメール配信に活かし、より精度の高いOne-to-Oneメールを実現できないかと考えました。
通常、ECサイト上で行われているレコメンデーションは、「ある商品を選んだ際にそれに関連する商品をオススメする」という、商品アイテムをベースとして別の商品をレコメンドする場合が多いと思います。レコメンドメールでは、「配信先となるあなたとってオススメの商品はこれです」という、人をベースにレコメンドするというのが基本です。サイトでもマイページにオススメ商品が表示されることがありますが、それと同じ仕組みです。
ただし、マイページのレコメンデーションが威力を発揮するのはユーザーがサイトへアクセスした際に限定されるのに対して、レコメンドメールならばサイトにはあまり訪れないユーザーへもリーチできるという点で、より対象が広くなる、という特徴があります。
--なぜ、レコメンドメールが必要になってきたのでしょうか? 開発の背景を教えてください。
有田:メール配信は、テキストメールから始まって、絵文字の活用、そしてHTMLメールというように、コンテンツがリッチ化してきています。これは、受信者側の興味を引くために重要なことですし、テキストと比較して伝えられる情報量が飛躍的に増すことでコンバージョンの精度も高まります。
しかし、メールの販促効果を追及していくと、体裁の改善のみでは限界があり、次の段階として「中身の改善」を求めるようになるというのは必然的な流れと言えます。
そもそも、メールマーケティングはリピート促進施策として活用されます。「リピートする以前」に取得した顧客データをいかに活用するかということは、メールマーケティングの効果を高めるための重要な考え方の1つです。以前は、会員登録時にメールアドレスとあわせて取得するデモグラフィック(統計学的な属性データ:性別・年齢・所得・職業など)な属性情報を活用することが一般的でしたが、ユーザーの嗜好性は多様であるため、この情報だけですべての嗜好セグメントをカバーするには限界があります。
そうすると、それ以外のデータとして、ユーザー各々の購買履歴や行動履歴をもとに解析された結果を活用することが有効なのは、既にサイト上のレコメンデーションにおいて実証済みなのですから、当然メールにおいても同様であるはずです。かといって、そのようなOne-to-Oneメールを手作業で行う訳にもいきませんので、システム面で解消するべきであろうと考えました。
伊地知:従来の販促メールのように、「今月はこれがお薦めだからメールに載せておこう」といった一斉送信や、「男性にはこれ」「女性にはこれ」と2パターンくらいを送るのは、手動でもできます。しかし、何万通りのパターンの嗜好を計算してメールを配信するというソリューションは、これまでにありませんでした。
レコメンドエンジンの場合、人の嗜好は単に性別や年齢・職業といったプロフィールから細分化するのではなく、「過去に買った商品」や「どんなページを閲覧しているか」といった行動履歴をベースにしています。プロフィールからは連想できなかった嗜好を導き出せるというわけです。
人間が簡単に想像できるものではなくて、隠れたニーズを計算で導き出し、さらにメール配信システムと連携したのは、私が知る限りこれまでにほとんどなかったのではないかと思います。
我々は“気づきのマーケティング”と言うのですが、例えば車のページを見ているから車を勧めるというのは誰にでも分かります。しかし、車を買ったばかりの人が見ているかもしれません。その場合は車を勧められても買わないでしょう。例えばですが、車と野球のページを見る人が実はカレーが好きだとか、一見関係なさそうなものを相関関係から導き出すんです。それがレコメンドの面白いところですね。