この記事は、日本マーケティング学会発行の『マーケティングジャーナル』Vol.46, No.3の巻頭言を、加筆・修正したものです。
世界初のテーマとなる「訪日旅行を巡る旅行者の心理」
周知のとおり、近年、訪日旅行者が急増しています。それにともなって私たちは、かつてないほど多様な文化的背景をもつ旅行者の心理や行動に直面しています。
けれど、国際学術誌で「訪日旅行」特集号が組まれたことはありません。そこで企画化されたのが、今回の『マーケティングジャーナル』の特集号でした。国際的アピールのために、今回は巻頭言と5篇の招待論文はすべて、全訳補録つきですが、英文で執筆・掲載されました。本記事では、その内容をご紹介していきます。
誰のオンラインレビューが、どんな訪日客のレストラン選択に影響するか?
読者諸兄は、大勢の外国人観光客が、現地日本人が行かないようなレストランに並んでいる現象をご覧になったことがありますでしょうか。第1論文はそんな現象に関する論文です。
執筆時には慶應義塾大学の訪問学者だった厦門大学の丘尚知准教授と2名の共著者による論文「相反するオンライン情報が訪日中国人観光客の飲食選択に与える影響(英文原文;和訳付録※PDFダウンロード)」は、あるレストランが高評価と低評価に分かれた場合、誰のレビューが参照されるのかという課題に乗り組みました。
丘先生・他は、私も著者として参加した海外誌に掲載した論文が旅行者と居住者という2群のレビュアーを想定したのを拡張して、今回は中国人旅行者、非中国人旅行者、日本人居住者という3群のレビュアーを想定して、消費者実験を行いました。
分析の結果、中国人コミュニティ内に自分を同化させたい意識が強い旅行者が、同胞のレビューを重視する一方、逆に中国人コミュニティ内で自分を差異化したいという動機が強い旅行者は、非中国人の旅行者コミュニティ内のレビューを優先する傾向が見出されました。日本人居住者のレビューは、3群の中で最も影響力が弱かったのです。
丘先生・他の研究は、日本人と訪日旅行者の訪問するレストランが大きく違う理由を説明した点で、実務的にも価値ある成果を提供しています。
