モバイルコマースはPCと何が違うのか?
PCとモバイルとでデバイスやユーザー層が異なるのだから、その上で利用されているサービスも大きく異なるのは当然のことである。その顕著な例として、本連載でもたびたび取り上げているのがコマースサイトだ。
そこで改めて、モバイルコマースとPCのコマースサイトにおけるユーザー動向の主な相違点について、整理しておこう。
1.他のメディアからの影響を受けて購入に至る
PCでは商品の情報を調べ、類似商品と比較・検討しながら購入に至るケースが多い。だがモバイルサイトの場合、操作・検索スキルに長けるユーザーが限られていることから、こうした経緯を経て商品が購入されるケースは少ない。
むしろ多いのが、テレビや雑誌など他のメディアから商品の情報を得て、それを元にモバイルサイトで購入するというケースだ。モバイルサイトは特にテレビとの連動性が高いことから、テレビで紹介された商品が売れ筋となる傾向も強い。
2.カートを使わず単品買い
1で触れた通り、他のメディアで得た情報を元にあらかじめ購入する商品が決まっていることから、ウィンドウショッピングのような行動をすることも少なく、目的の商品“だけ”を購入することが多いのも大きな特長といえるだろう。
それゆえカートに複数の商品を入れて購入するというケースが少なく、複数の商品をカートに入れて購入することが一般的となっているPCのコマースサイトとは大きな違いを生み出している。
3.思い立ったらすぐ購入
常に手元にあり、電源が入っているデバイスであることから、商品の情報を知った時点ですぐ購入できるというのも、モバイルならではの特長だ。それゆえテレビで紹介された商品であっても、その場ですぐ購入に結びつけることができるので、タイムラグによる機会損失が少なくなっている。
4.レコメンドが購買動向に大きく影響する
ことモバイルを中心として展開しているコマースサイトにおいて、特長的なのはメールマガジンである。購入者にメールマガジンの会員登録をさせ、メールマガジンでオススメ商品の情報を送付することで、会員の購買意欲を駆り立てるという手法が、売り上げの向上に結びついているのである。
5.決済手段は代引きが主流
モバイルサイトの利用者は若年層が多く、クレジットカードの契約・所有に少なからずハードルがある。そのためモバイルコマースの決済手段は、クレジットカードよりも代引きが利用されるケースの方が多い。最近では層の広がりと共にクレジットカードの利用も増えてきているが、代引きが主流であることに変わりはない。
モバイルコマースは“衝動買い”
メルマガやテレビなどで紹介された商品だけを、その場ですぐに購入する。こうした特性から、モバイルコマースの特長を一言で表すと、ちょうど「衝動買い」という言葉が当てはまるのではないかと思う。これは、商品をじっくり吟味・検討して購入する機会の多いPC向けコマースサイトとの、決定的な違いである。
ゆえに、購入される商品にも大きな違いが出てくる。モバイルで購入される商品は、他のメディアで情報を得たものに加え、CD・DVD、医療品、日用品など、比較の必要がなく自身で商品価値を理解でき、かつ比較的安価で購入しやすいものが中心となる。逆にいえば家電などのように、購入にあたって一定の情報が必要、かつ高額になりがちな商品は売りにくい商材といえる。
商品の鮮度についても同様だ。季節や時流によって人気の商品が変化するのは当然のことではあるが、モバイルの場合このサイクルが非常に早い。極端なケースを挙げるなら、テレビで紹介された商品などは紹介後数時間のうちに購入者が殺到し、数日後には売れなくなるということもある。それゆえ商品の情報鮮度には十分注意を払い、タイミングを逃さないことが求められる。
PCのECサイトにおいて「ロングテール」という言葉がよく用いられるのはご存じの方も多いことだろう。だがモバイルコマースは、どちらかというとその逆をいくと考えた方がいいかもしれない。つまり商品の数を揃えるより、情報鮮度の高い商品に積極的に入れ替え、その時“売れる”商品を用意することが重要となってくるのだ。