ユーザーを広げるには、モバイルの位置付けに工夫を
ただ一方で、モバイルコマースの課題として、ユーザー層の広がりが鈍いということもある。やや古い資料となるが、モバイル・コンテンツ・フォーラムの統計によると、2008年のモバイルコマースの市場規模は130%と大幅にアップしている。だがそれは、利用者が増えているというよりも既存利用者のリピートが増え、購買額が上がっていることによるところが大きい。確かに、既存のモバイルコマース利用者を取り込めば効果は得られるものの、市場を広げる上でも、それ以外のユーザーを取り込む工夫が求められているのは事実だ。
そこで重要となってくるのが、モバイルコマースの“位置付け”である。以前にも触れたが、モバイルコマースに馴染んでいない人をモバイルに誘導するには、まず“モバイルサイトを使わせる”というハードルがある。新しいユーザーを取り込むには、ハードルを越えさせるための工夫が必要であり、それにはモバイルコマースの位置付けを大幅に変える必要も出てくる。
その一例として、ファッション誌の通販広告や、カタログ通販雑誌などを挙げておこう。以前、こうした雑誌には商品毎にQRコードが用意されており、ユーザーはそこから個々の商品を“一点買い”すると紹介したことがある。これを別の角度から見ると、商品の選択をモバイルサイトではなく慣れ親しんだ“紙”に任せてしまい、モバイルコマースを“決済ツール”と割り切った位置付けをすることで、モバイルの利用へのハードルを下げているともいえるのだ。

(モバイル・コンテンツ・フォーラム発表資料より)
今回の内容をまとめると、以下のようになる。
- モバイルコマースは“ロングテール”より“衝動買い”を狙う
- モバイルでは一度利用したコマースサイトのリピート率が高い
- 購入体験をしてもらうには、モバイル内でのプロモーションが有効
- 層を広げるには、思い切ってモバイルコマースの位置付けを変えることも考慮する
一口にモバイルコマースといっても、モバイルコマースを専門に手がけている事業者だけでなく、PCのコマースサイトやテレビショッピング、カタログ通販事業者など、さまざまな企業がモバイルコマースを展開している。事業形態に応じてモバイルコマースの活用方法が変わってくる部分もあるが、いずれの場合もモバイルコマースの利用者動向と特性を上手に生かすことが重要となるのは事実である。
“ついで”ではなく、モバイルに本腰を入れるための体制作りも求められるところだ。