企業のあるべき姿とは
第2回でご紹介した花王「AUBE」の事例では、公式ブログへのトラックバックを受け付ける際に、花王は送信元のブログをチェックし、薬事法を守っているか、他社を批判する内容を書いていないかを確認していました。ブロガーとの付き合いをする上で、多くの企業は自社を批判されることを恐れている中、自社への批判はかまわないが、他社批判の記事は企業の公式ブログとして載せられないという姿勢には深く共感しました。これこそが企業のあるべき姿です。
しかし昨年行われた、とあるブログPR広告では、薬事法に抵触するようなプロモーションが行われていました。事前の注意勧告がどの程度行われていたのかわかりませんが、広告表示が不徹底な状況を考えると、あまりにも軽率ではなかったのかと疑問が残ります。化粧品を使用して「肌がすべすべになった」というのをブロガーは普通に書いてしまいます。なぜなら普段は自分の体験を記事にしているだけなので、自分がそう感じれば躊躇なく書いてしまうのです。これはブログに限った話ではありません。学校や職場での会話で、友だちとのメールや電話で、私たちは自分の感想を伝えます。そうです、まさにこれこそがクチコミのチカラなのです。
そしてそれは「広告」になった瞬間に許されなくなるのです。そのことについてブロガーもまだまだ不勉強なのは否めませんが、そのことを意識させるのは代理店の仕事ではないのでしょうか。筆者はあまりにも意識が低いサービス事業者が多すぎると感じています。CGMが流行語になり、アルファブロガーやインフルエンサーと呼ばれ、自分たちがメディアになったと勘違いしているブロガーもゼロではありません。メディアには節度が必要なのに、広告主企業に対して高圧的な態度を取っているブロガーがいるとすればそれは問題だと思います。しかしこのような過渡期だからこそ、仲介者としての広告代理店に整備をする責任があるのではないでしょうか。
今まさに起こっている問題はこのような悪循環が加速していることなのです。ブロガーとどう付き合っていいかわからなくて困っている広告主企業、彼らにブロガーとの間違った付き合い方を指南する代理店、そして記事広告をアフィリエイトと大差ないと勘違いしている小遣い稼ぎ目的のブロガー、この組み合わせがブロゴスフィアを汚染し、ひいては検索結果を混乱させ、ネットにおける言論の自由さえ奪いかねない、そのような危機的状況を生み出そうとしているのです。私たちすべてが、このどこかに関わる可能性があります。特に広告主企業の担当者として関わる場合は、本当にその方法がベストなのかをよく考えてみてください。このような仕組みで書かれている、アンフェアな記事に本当に影響力があると思いますか。
クチコミマーケティングブームに騙されてはいけない
冒頭のメッセージを繰り返しますが、今騒がれているクチコミはただのブームです。そもそもクチコミは昔からもあったものだし、これからもあり続けるでしょう。そしてそれは恣意的な操作では絶対に起こらないものです。むしろそういったコントロールとは対極に存在するものです。私たちにできるのは「話題の提供」だけで、その先の波及は任せるしかないのです。確かに、ホリスティックな設計を考えた際にネットでの評判は重要です。特に検索結果上位にブログがたくさん表示されるようになった今、ブロガーに良いことを書いてもらいたい気持ちはわかりますが、その手段を間違えると取り返しのつかないことになります。
ブログが購入検討で参考にされるのは「生」で「今」の声がそこにあるからです。私たち生活者が購入したり、体験した商品について本音を書いているからこそ、それが読まれ、(ほんの少しかもしれませんが)影響を与えられるのです。お金に吊られて書いた提灯記事が人を動かせるわけがないのです。お金でBuzzは買えません。今こそCRMを考え直し、自社の顧客(や見込み顧客)と適切なコミュニケーションを取ることを考えなければなりません。筆者は今年以降、CRMが見直されると信じています(PGMもそのひとつです)。
今回はここまでにしましょう。次回はホリスティック・マーケティングの話題に戻し、最近効果が落ちているといわれているテレビCMや、それ以外の広告媒体(中吊り広告など)との連携について、事例やデータを交えながら紹介したいと思います。