オバマの選挙戦で行われていたクリエイティブテスト
このように、指標を利用してボトルネックを発見した場合には、パフォーマンスを改善するための施策を実施することになる。その際に、常にテストを行うことが重要であることをDan氏は指摘した。ここでは実際に行われたクリエイティブのテストについて紹介しよう。
計測しはじめた最初の段階では、Dan氏のチームは、訪問者の数は順調であるものの、メールマガジンへの登録率が低いことを発見した。それを解消するべく、クリエイティブや登録ボタンの文言を数パターン用意し、テストすることにしたという。
実際にはメールマガジンへの登録画面の画像と登録画面の文言の組み合わせをテストしたのだが、プレゼンテーションでは、組み合わせに使った文言のみを紹介した。
メールマガジンへの登録を促すボタンのクリエイティブとして、1番成績の良かったものはどれだろうか?
- sign up(登録)
- learn more(さらに知る)
- Join us now(今すぐ加入する)
- sign up now(今すぐ登録する)
正解は2の「learn more(さらに知る)」。こうした実験と検証を繰り返すことによって、計測結果、パフォーマンスの悪いポイントを改善していったのである。
ゴールに基づいたセグメンテーション
プレセンテーションの後半では、質疑応答の時間が設けられた。その際に参加者から次のような質問が挙がった。
「オバマ大統領が集めたメールマガジンへの登録者数は全米一と言われているが(実際には間違いであるとDan氏は否定しているようだが)、現在どのように活用しているのですか? また、期間中に登録が足りないと思われる層に対しての特定のアクションは行いましたか?」
この問いに対して、Dan氏は「我々は選挙中は年齢や居住地などは分析しなかった」と回答。もちろん、より広範な支持者が必要なので特定の層にこだわる必要がないというのも理由の1つだが、それよりも訪問者へのセグメントは冒頭でも述べた、
- メールマガジンへの登録者数
- 寄付を行った人の数
という2つの指標に基づいたセグメントを行ったようだ。オバマの選挙戦におけるメールマーケティングは、メールマガジン登録者と、登録したうえで既に寄付も行ったユーザーのどちらに、どのクリエイティブが最適なのか? を試していたという。
このように、ゴールに対して最適な指標を設定し、その指標に基づいて課題を発見、さらに施策を実施する際には、“その訪問者がどの段階にいるユーザーなのか”を明確にし、最終ゴールを目指すべきだとした。
米大統領選でも使われたGoogleのサービス
最後に、Dan氏がプレゼンテーションで利用していたGoogleのサービスを紹介しよう。
プレゼンテーションや活動で、Googleのサービス群が効果的に使用されていたのは、印象的だ。YouTubeなどは、既にご存じの方も多いと思うので、あまり目にしないサービスだったり、使い方が特徴的であったサービスを3つ紹介しよう。
- Googleモデレータ…会議やプレゼンテーションのモデレートを行うためのサービス。質問や文章を書き込み、その質問に賛成か反対かを投票できる。プレゼン中に質問を募集し、どの質問に対して会場に参加している人の興味が高いのかを知るために使用されていた。実際に当日出ていた質問は、こちらから参照できる。
- Google Website Optimizer(グーグル・ウェブサイト・オプティマイザー)…オンラインマーケティングの、クリエイティブ検証に使用できるサービス。無料で提供されている。Dan氏は米大統領選のプロモーションにこのサービスを利用していた。
- Google Trends for Websites(グーグル・トレンド・フォー・ウェブサイト)…2008年6月20日に発表されたGoogle Trends(グーグル・トレンド)の追加機能。サイトへの訪問者数を時系列で知ることのできる。このツールを使うことで、対立候補がどれくらいの訪問者を集めているかを知るのに使用していた。
