3日目のキーノートスピーチには、オバマ大統領の選挙チームでニューメディアのアクセス解析チームのマネージャーを務め、現在はCarrotSticksというベンチャーを起業したDan Siroker氏が登壇した。彼はオバマ大統領の選挙チームに加わる前は米Googleに勤務しており、Web OptimizerとGoogle Chrome(グーグル・クローム)のプロダクトマネージャーを務めていた。プレゼンテーションはそのバックグラウンドが垣間見える内容となった。
データから振り返る米大統領選
Dan氏のプレゼンテーションは、オバマの選挙戦をデータで振り返る形からはじまった。既に多くのメディアで報じられている内容もあれば、あまり報道されていない情報もある。
- 一般投票にて約6、900万票を獲得(約5、900万票)
- 365人の選挙人からの票を獲得(173票)
- 期間中のFacebookのフレンド数約240万人(約60万人)
- 期間中のYouTubeのビデオ再生数累計約8、000万回以上(約2、000万回以上)
- 期間中のWebサイトへの訪問者数約1.2億(約3,000万人)
- 支援者からの寄付金約6.5億ドル(約2億ドル)
【注】カッコ内はマケイン候補の数値
オバマ大統領の投票数が対立候補を上回っているのは当然として、オンラインを利用したプロモーションの数字についてはほとんど2倍以上の差をつけて圧倒的に勝っている
特に、寄付金についてはオンライン経由のものが5億ドルに上っており、対立候補であるマケイン氏が集めた総額の2倍に近い。Wiredによれば2004年に米大統領選挙を戦ったブッシュ陣営が用意した選挙資金は2004年5月の時点で2.1億ドルほどだとされており、これと比較しても大きな数字であることがお分かりいただけると思う(詳細:Kerry Net Strategy Now on Voters,Wired.com /米大統領選:ネット戦略を進化させる両陣営(日本語訳).WIRED VISION)
それでは、データ解析チームのマネージャーの立場から見たオバマ大統領のプロモーションが成功したポイントを解説していこう。
米大統領選に勝利するために必要な具体的な数字
米大統領選のみならずデータ解析を使って成功の可否を分析する際には、プロジェクトの目的が決まっていることが大前提だ。一般的には売上アップ、資料請求数の増加、などが挙げられるだろう。
米大統領選の場合は、当然“選挙戦に勝利すること”が最大の目的となるわけだが、それだけでは、決着がつく日まで、うまくいっているのかどうか検証する術がない。
そこで、彼は“米大統領選に勝利する”を最終ゴールとし、そのゴールを達成するための指標を定義したという。
例えば、Webサイトへの訪問者数を計測することで世間の人々の関心の度合が分かるし、メールマガジンへの登録者数を測ることでさらに関心を持っている人の数が分かる。まら、寄付を行った人の数を計測することで支持をしている人の数を知ることができる。
こうして、ゴールにどれくらい近づいているのかを計測可能な指標に置き換えることで、どこがボトルネックになっているかを発見するこが可能だ。
その結果から、関心を持つ人を増やすべきなのか、関心を持った人の中から寄付を行ってもらえる人を増やすべきなのかといった施策を打つことが可能になる。実際に、訪問者数(率)、メールマガジン登録者数(率)、寄付者数(額、率)などを指標においていたとのことだ。