SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究

Web Analytics 2.0
「アクセス解析」を超えるための4つのヒント

 Web分析の第一人者、Avinash Kaushik氏の最新作”Web Analytics 2.0”。アクセス解析の知見をアクションにつなげるヒントの提示とアクセス解析以外の分析からの知見をアクションにつなげること提案する本書を紹介する。

米国アマゾンで集まった44件すべてのレビューが満点

 Web分析の第一人者、Avinash Kaushik氏が2冊目の著作、”Web Analytics 2.0”を発表したのが昨年10月。約5ヶ月経過して同著作への評価もほぼ定まって来た感があるが、米国アマゾンで集まった44件すべてのレビューが5点満点の5点(3月31日現在)と一冊目の”Web Analytics: An Hour A Day”(71レビュー中63レビューが5点)に引き続き読者から高い支持を受けている。

 第一作目の著作は、「Webアナリスト養成講座」として日本語に翻訳されたが、「導入費用に見合う効果をアクセス分析からあげたい」と考えるアクセス解析導入主管部署、「アクセス解析を導入したが、アクションに繋がらない」と悩むアナリストやマーケター、「クライアントにアクセス解析の知見に基づく最適なアクションを提案したい」と頭を悩ますコンサルタントはまだまだ大勢いることと思う。

 アクセス解析の知見をアクションにつなげるヒントの提示とアクセス解析以外の分析からの知見をアクションにつなげること提案する本書を紹介したい。

1. 著者はWeb分析のグル

 著者のAvinash Kaushik氏は、GoogleのAnalytics Evangelistであり、ベストセラー、Web Analytics: An Hour A Day(June 5, 2007出版|邦題:Webアナリスト養成講座)の著者である。アクセス解析の活用方法やデータに基づく意思決定文化導入について、eMetrixなどの講演会、スタンフォード大学などの大学、DELLなど企業での講演多数。

 同氏のブログも人気を集めており、いわば、Web分析のグルである。

 本書、Web Analytics 2.0(Oct. 26, 2009出版)は、Kaushik氏の2冊目の著作であり、1冊目に出版したWeb Analytics: An Hour A Dayから約2年半経過後に出版した続編にあたる。両書籍とも、原著はWileyから出版されている。

 Kaushik氏によると本書のゴールは、

 To change how the world makes decisions when it comes to online.

 (オンラインの世界での、人々の意思決定のやり方を変えること。)

 とのことだ。

 Kaushik氏は2冊の著作から発生する収益をすべて2つの慈善団体に寄付している。

2. Web Analytics 2.0とは何か?

 本書で提示されているコンセプト、Web Analytics 2.0とは何か?

 著者によれば、Web Analytics 2.0の定義は次の通りである。少し長いが引用してみる。

 Web Abnalytics 2.0 is: the analysis of qualitative and quantitative data from your websiite and the competition, to drive a continual improvement of the online experience that your customers and potential cusotomers have, which translate into your desired outcomes (online and offline).

 Web Analytics 2.0とは、オンライン、オフラインを問わずあなたの望みの結果を出すために、あなたのWebサイトを訪問する顧客や潜在顧客のオンライン経験を継続的に改善するための、自社サイト、及び、競合サイトの定量的、及び、定性的な分析である。

 このコンセプトのどこが新しく、従来のアクセス解析と異なるのか、定義の中で使われている3つのキーワードに着目して分析してみる。

  • 「オンライン、オフライン問わず」

 従来のアクセス解析は、暗黙的にオンラインに限った施策の成功の度合いを可視化するものであった。メルマガの効果測定、リスティング広告の効果測定、アフィリエイトの効果測定。すべてオンラインの施策の効果測定である。

 しかし現実には、私たちはテレビのニュースで取り上げられた便利グッズをECサイトで購入したり(AIDMAのMまでがオフラインで形成され、最後のAだけオフラインで実行された例。)、逆に、バナー広告で、ある商品に興味を持ったので、最寄りの店舗で購入したり(AIDMAのMまでがオンラインで形成され、最後のAだけがオフラインで実行された)している。

 Web Analytics 2.0の概念では、従来はアクセス解析の外にあった「オフライン」の要素もなんとか工夫して、分析の対象にする。(少なくともチャレンジはする。)という点が新しいと言えるだろう。

  • 「自社サイト、及び、競合サイトの」

 従来のアクセス解析は、自社サイト、自社のマーケティング活動の解析をスコープにしていた。Webサーバが記録したものか、Javascriptが作り出したものかは問わず、自社サイトへの訪問者の行動をログとして解析対象としているからだ。

 しかし、例えば、自社サイトの訪問数が月間100万で、コンバージョンレートが2%ということが分かったとして(ここまでは従来の解析で分かる範囲)、もし、同業他社のそれがそれぞれ、月間200万と4%ということを知ることができれば(ここがWeb Analytics2.0の範囲)、あなたは、自社サイトの訪問数増加やコンバージョンレートの向上がどれほど喫緊の課題か、月間およそいくらくらいの売上の差が彼我に発生しているのかが分かり、適切な緊急度、重要度をもってアクションを起こすことができる。

 Web Analytics 2.0の概念では、競合他社サイトの動向も分析し、自社に最適な戦略を立案、実行することまでを含む。という点が新しいと言えるだろう。

  • 「定量的、及び定性的な分析」

 従来のアクセス解析は、定量的な分析には強みがあったが、定性的な分析はできず、せいぜい定量化された分析結果を利用して「推測」することができるに過ぎなかった。

 たとえば、申し込みフォームからの離脱が、全4ステップのうち、3ステップ目で45%の訪問者が離脱している(定量的解析)ということは、従来のアクセス解析でも分かる。ただし、「なぜ」3ステップ目で離脱する人が多いのか?という、対策を実施する上での根源的な問いには答えることができない。離脱先がサイト外か、それとも、サイト内の他のページに寄り道しているのか?寄り道先はどんなページか?(たとえば送料や返品条件が掲載されているページ)という情報を手がかりになんとか推測しているのが現状だ。Web Analytics 2.0の概念では、定量的な分析にとどまらず、適切なアクションにつなげるために定性的な分析もするべき。と提唱しているところが新しいと言えるだろう。

 ただし、技術的に未完成であったり、精度が高くない場合があったり、特殊な条件でないと機能しない場合があったりと、従来のアクセス解析がある種の市民権と企業社会の中で認知を受けているのに比べると、まだまだこれから先に手法やツールの充実が期待される分野と分類されるように思う。

会員登録無料すると、続きをお読みいただけます

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

次のページ
3. Web Analytics 2.0の概念を、実際の解析に落とし込む5階層

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

木田 和廣(キダ カズヒロ)

株式会社マキシマイズ 執行役員兼プロジェクトマネージャー。早稲田大学政治経済学部卒業。豊田通商の南米駐在員として自動車販売に従事。カーポイント(現カービュー)に転職し広報・マーケティング兼営業としてiモードサイト構築等を担当。その後、海外ダイビング器材のネット販売等を経て、アクセス解析の世界に入る。Webtrend...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2010/04/16 10:00 https://markezine.jp/article/detail/10085

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング