Q. 事業をすべらせないために気をつけていることはありますか?
事業企画段階から開発・リリース後の運用、規模拡大の展開に通じて、最も気をつけているのは次の3点です。
- 成功のポイントをKPI(数値)化し、いつでも数値で判断できるようにしておく
- リスクを事前に把握・排除し、排除できないリスクは対応方法をイメージしておく
- かかわるメンバー全員に上記2点を完全理解させ、成功のイメージを持たせる
1つ目の「成功のポイントをKPI(数値)化し、いかがなる状況も数値で判断できるようにしておく」というのは、事業を推進する過程において発生する、さまざまな課題や事象を“数値”というデジタル情報に置き換え、並列比較して、いつでも客観的に検討できる柔軟な体制にすることが目的です。
経営、営業、編集、システム、マーケティングなど、決して同じ観点で判断ができないことが発生するのが事業というものです。しかし、その要素をKPIとして数値化することによって、本来複雑なものである“事業”の透明性を高め、改善すべきポイントやその優先順位が瞬時に判断できるようになります。
もちろん、すべてのことをKPIとして数値に落とし込むことはできません。だからこそ、“数値化できない = 曖昧でよく分からないもの”はとりあえず置いておき、“数値化できる = 曖昧ではない、よく分かるもの”を大事にすることが、事業成功の確率を上げると考えています。また、KPIを注視することで余計な頭や労力を使うことがなくなり、チャンスを獲得する可能性も高まると思います。
2つ目の「リスクを事前に把握、排除し、排除できないリスクは対応方法をイメージしておく」というのは、文字どおり、事前にリスク対応策を考えておくことです。しかし、最も大きな目的は、“事業が成功しない要因を言い逃れのできない自分の責任にすること”です。
リスクは「外的なもの」と「内的なもの」の2つに分けることが非常に重要です。外的なリスクは、運営者にとってコントロールできないことが多く、実際にリスクが問題となることを事前に把握できていたとしても、完璧な対処はできません。そのため、外的なリスクは排除するか、内的なリスクとして内包すべきです。
一方、内的なリスクは、運営者にとってコントロールができるリスクなので、理論上は、すべて排除・解決できるはずです。また、すべて排除できなかったとしても、事前に把握することはできるはずなので、自己責任において、いかようにも対応できるはずです。コントロールできないことが起こると、やはり人間は弱いので、逃げの言い訳をしてしまいます。そういった状況を最初から作らないことが大事だと思います。
最後の「かかわるメンバー全員に上記2点を完全理解させ、成功のイメージを持たせる」というのは、かかわるメンバーが1人であっても、1,000人であっても非常に重要なプロセスで、メンバーのモチベーションとパワーのコントロールが目的です。
経営陣含め、どのレイヤーのメンバーも各々、性格、志向、能力があります。それを一辺倒な指示だけでコントロールすることは、容易ではありません。また、上長の人格や能力、メンバーとの関係性により、コントロールすること自体が困難になることさえあると思います。
どんな人間でも、自分がかかわる事業が成功して盛り上がることは嬉しいはずです。その当り前な感覚を生み出すためには、トップダウンの指示だけでなく、“事業を成功させるためには…”“事業を失敗させないためには…”という2つの理解が必要だと考えています。「こうすれば成功するんだ…」「お、本当に効果が出た」「次はこれをやってみよう」という正の作用を自発的に生みだすことは、とても大切なことだと思います。
Q. 貴社のサービスは基本的に自社サイト上にクライアント、およびユーザーを集めるという考え方ですが、iPhoneアプリやmixiアプリなど外部のサイトやプラットフォームへの横展開はお考えでしょうか?
スマートフォンであるiPhoneは、基本的にWebやモバイルユーザーのニーズと大きな差異はないと思うので、十分にあり得ると思います。
しかし、ソーシャルアプリの領域で成功できるかどうかは、正直なところ分かりません。実名公開が当たり前のFacebookや、ほぼ個人が特定できるような情報発信が行われるTwitterと違い、日本のSNSは匿名が一般的です。Webやモバイルで展開されている情報サイトに、SNSユーザーとの親和性やSNS運営会社のニーズがどれほどあるのかはまだ分かりません。
ポータルサイトのようなカテゴリを持つFacebookアプリは先駆的な存在なので、「ゲームが主体の日本のSNSアプリは今後どういった方向に向かうのか」を意識しつつ、横展開を考えたいと思っています。