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ウェブ解析のプロが教える! データを活用したサイト改善術

ランディングページ1ページ主義は危険!?
訪問者を取りこぼさないための大事な考え方

即入力フォームへ誘導するランディングページの問題点

 さて、比較的、訪問者の目的が明確化しやすいランディングページでの改善にもう少しフォーカスした内容をお伝えしたいと思います。ランディングページは、訪問者を特定のキャンペーンやキーワードで誘導するため、サイトのトップページなどよりも、そのニーズを判断しやすい箇所になります。

 ランディングページの最適化を実施するにあたり重要なのは、できるだけシンプルにしていくことだとよく言われます。この<シンプル>という概念は非常に重要です。ただし、その言葉だけを捉え、単純にコンバージョンまでのページを減らして、“ランディングページを1ページに収めて次のページは入力フォームのみ”といった構成にしてしまうと、冒頭で分けた2つのセグメントのうち、検討段階にあるセグメントをまったくフォローできなくなってしまうわけです。

 先程も触れたとおり、集客方法によってはコンバージョンしたいと思うラインを超えていない訪問者が多い場合もあります。もし、そのような訪問者が、次のページはフォームだけというサイトを訪れても、その先に進むことは少ないでしょう。そして直帰は、あまり多くの情報を残していきません。そのため、改善アプローチも非常に行いにくくなってきます。

 こうした点を踏まえ、実際のランディングページでは、「すぐにコンバージョンしたい訪問者」と「そうではない訪問者」の両方を受け止め、かつ「ニーズの判断ができる」構造を考えていく必要あります。

意欲の低い訪問者に見せるべきコンテンツとは

 では実際に、コンバージョンしたいというラインを超えてもらうためには、どのようなコンテンツを用意していくのがよいのでしょうか。ここでは、“訪問者が情報収集をどういう意図で行うのか”というのを捉えるための参考として、消費者行動論に少し触れてみたいと思います。

 今回、『消費者行動論(ダイヤモンド社)』という書籍に書かれている内容をベースに紹介していきますが、本書には「購買リスクと関与度が高いほど、情報収集量は増える」と書かれている部分があります。

 “関与度”とは「その商品に対する入れ込み度合いのこと」を表しています。つまり、情報収集の動機のようなもので、消費者が何か購買をする際に、自分の生活・ライフスタイルにどのくらい密接に関係しているか、そして必要性があるかということを指しています。

 そして、もう一方の“購買リスク”は、文字どおり購入しようと行動する際の足かせのようなものです。消費者は、この購買リスクを減らしていくためにも、情報収集を行うわけです。例えば、マンションを購入するのに、提示された価格だけを見てポンと購入する人は少ないでしょう。駅までの距離、周辺地域の情報、貸しだした場合の家賃価格など、さまざまなことを情報として収集するのは容易に想像できると思います。

 この“関与度”と“購買リスク”のうち、サイト運営者が改善のアクションを取りやすいのは“購買リスク”に関わる部分です。これは、商品への“関与度”を高めるには、その人の生活やライフスタイルを知る必要があることや、実際に用意したとしても、それは自社商品というよりも市場全体への喚起になることが多く、コンテンツを用意したことによる自社サイトへのコンバージョンに対する貢献度を知ることが難しいためです。

 例えばゴルフクラブを売るのに、「ゴルフの魅力を伝えるところから始めて、ゴルフ自体に興味をもってもらう」というのが、“関与”を創りだすための施策となります。ここから始めることも、もちろん重要ですが、最終的なアクションまでの道のりが長くなり、その効果の測定も難しいと言えます。

 これに対して“購買リスク”は、“関与”が発生した後のプロセスに関わる問題になります。リスクを排除したいというユーザー心理は、ある程度予測できるため、サイト運営者側で購買リスクを取り除くためのコンテンツが、比較的“用意”しやすいと言えます。例えば前述の消費者行動論では、下記のような分類でリスクが紹介されています。

リスクの種類(※消費者行動論P.114より)
  1. 金銭的リスク:商品価格、サーチコスト、維持費、トレーニングコスト
  2. 機能的リスク:品質、性能、使用頻度、修理のしやすさ
  3. 物理的リスク:使用上の危険性(刃物、電気、燃焼物、動力を持つ)
  4. 時間的リスク:配達、設置、立ち上げ、トレーニング、使用にかかる時間
  5. 心理的リスク:選択ミスによる心理的苦痛、自分の信念やセルフイメージと合わない
  6. 社会的リスク:酒や煙草など社会的にイメージの悪い商品、服や靴など露出度が高く他人の目が気になる商品

 先程のゴルフクラブの例で言えば、「金銭的リスクと機能的リスクを減らすために値段や機能の魅力などを伝えるコンテンツを用意していく」ということになります。

 リスクを払拭することだけが、すべてのアプローチというわけではありませんが、特定の商品やサービスへの改善を行ううえでの指針になりえます。実際に自社のサイトで提供している商材に照らし合わせてみてください。上記のような視点のコンテンツが提供できているかどうかを、改めて見直すだけでも、十分に価値があります。こうしたリスクを除去するコンテンツを用意して適切に見せていくことでラインを超えやすくし、コンバージョンへの誘導を高めるわけです。

コンバージョンへの意欲が低い訪問者を切り捨てるのではなく
リスクを軽減するコンテンツを用意することが重要
コンバージョンへの意欲が低い訪問者を切り捨てるのではなく、リスクを軽減するコンテンツを用意することが重要

まとめ

 購買リスクを下げることは、サイトでのコンバージョンを増やしていくためのアプローチの1つです。購買リスクを下げるための情報を洗い出していくことは、その商品やビジネスとしっかりと向き合うことが必要になってきます。これはできているようで、普段は意外と感覚で行ってしまっているケースが多くあります。

 サイトを改善していくことは、ユーザビリティやデザインなど制作に近い部分を改善することと、マーケティングやコンテンツでのメッセージなどビジネスに近い部分を改善することの2つの軸があります。そして、その両方にフィードバックできるデータを取得できるのが、ウェブ解析ツールです。

 今回は、マーケティングの組み立てに近い部分について触れましたが、次回は、この考え方をうまくサイト改善に適用して成果を挙げている事例を、紹介したいと思います。

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この記事の著者

安西 敬介(アンザイ ケイスケ)

アドビ システムズ株式会社
グローバル サービス統括本部
プロダクトエバンジェリスト 兼 シニアコンサルタント

2001年より国内大手航空会社にてWeb解析やデジタルマーケティングを担当後、オムニチュアへ2008年に入社。2009年の買収によりアドビシステムズへ。エンドユー...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2010/08/20 11:00 https://markezine.jp/article/detail/11112

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