数字を判断するのはあくまで人間の感覚
今後の広告戦略の方向性を検討する際に有効な数字の使い方として、投資した資金に対して得られる利益の割合である“ROI”の捉え方を例にとり、中川氏は次のように解説している。
「例えば、売り上げが1000でコストが100の場合のROIは10で、売り上げが500でコストが10だと、ROIは50。ROIだけで考えれば後者が50だから良い状態なのかといえば、そんなことはありません。売り上げの全体量が少ないという点を見落としてはいけません」として、「ROIは目的ではなく、課題発見のためのツールです」と結論付けた。

「売り上げ自体を伸ばさなくてはいけないと考えたときに、それはお客様の数の問題なのか、あるいは客単価の問題なのか。お客様の数が少なければ、それは流入の問題なのか流出の問題なのか、と分析を進めていくことができます」という中川氏。

さらに次のステップとして「では、どんなお客様をどこから連れてくるのか。現ユーザーが対象なのか、それとも市場の発掘が必要なのか」を、その数値データから得て把握することで、その後の具体的な方針へと繋げることができるというのだ。
中川氏はさらに、このように数字が言語同様のコミュニケーションツールである以上、一種のコミュニケーションミスが生じることを指摘。その原因は数字の解釈の違いにあることを、人気ポップグループ「EXILE」を例に説明した。
「結成当初5人だったEXILEのメンバー数は、現在では14名になりました。この変動を回帰分析していくと、ある指数関数がフィットしそうだという結論に達します。そのラインでさらに分析を進めていくと、2029年には全地球がEXILEになってしますのです」
このようにユニークで分かりやすい例を示し会場の笑いを誘いながらも、中川氏は次のように結論付ける。「数字に対して感覚的に違和感を持ったら、大体どこかが間違っているものですとし、数字を判断するのはあくまで人間の感覚です」と強調した。
