数字はコミュニケーションツールである
講演の前半は「思わず数字を見返したくなる話」と題し、株式会社ロックオン マーケティングメトリックス研究所 所長 中川氏が具体例を交えながら、改めて数値データの持つ性質や意味について述べた。
以下のグラフに示されているのは、A社、B社の業績を示したもので、A社のグラフは“昨年比¥2,776,000,000増”で、昨年よりも“大きく業績が伸びている”ことを表現しているものだ。それに対して、B社のグラフは“業績は3%弱の微増に留まった”ことを示し、“景気の悪化による全体的な消費の鈍化に影響を受けた”と述べている。
しかし、A社もB社も具体例として扱っているのは同じ金額であり、片やそれを「すごく伸びた」とし、一方では「ウチはこれだけしか伸びなかった」と表現。企業を取り巻く状況や分析者の心情によって、これだけ伝え方が変わるという例を顕著に示していた。
中川氏はこの表現の違いを例に取りながら「数字は言語である」と定義。すなわちコミュニケーションツールの1つである数字の目的は、“数字そのものを伝えること”ではなく、“数字を使って何かを伝えようとする”ことなのだと強調した。
当然のことながら、数字を使って物事を伝える目的は、誰もが理解しているように、もう1つある。それは、より正確に、より説得力を持って伝えるために必要だということ。従って、数字の意味を正しく分析・理解し、それをベースにコミュニケーションすることが重要であると述べた。