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ホリスティック・マーケティング入門 ~PGMから始めるWOMマーケティング~

「テレビCM崩壊」ってホント?


 はっきり言えば、テレビCMは昔から見られていないし、同時に昔からある程度は見られている。つまり、別にここ10年で変わってないのです。一方で変わったのはインターネット環境です。1,000万人規模の人がブログで自らの声を発信し始めた。そのうちの何人かがブログで「テレビなんて見ない」と書き、それまでマスコミや広告代理店に届かなかった声が聞こえてしまったために慌てているというのが実情だと見ています。

 話はそれますが、「活字離れ」もマスコミの暴走だと思います。出版不況は数字が示しているので(出版市場の定義が正しいのかはさておき)まだわかるのですが、「活字」はむしろ以前よりも接触頻度が増えているのではないでしょうか。我々は日常的に、インターネットでブログを読み書きし、さらには若い世代もケータイで小説を読んだりしているわけです。マスコミは時に事実とずれた、オーバーな表現をします。過激な報道に惑わされず、まずは自分の身の回りを正しく見て判断するようにしましょう。

 話を戻します。昨今「テレビCMが崩壊した」と言われていますが、本当に効果はないのでしょうか。実はここにおもしろいデータがあります。これは「今日のニッパウ」というブログで調査されたデータなのですが、グリコの「ポッキー」のCMの放映に合わせてキーワードの検索回数がどのように変化したかを示すものです。

 ポッキーのCMというのは例の新垣結衣が踊ってるやつです。筆者の周囲でも大人気で、筆者も大好きです。それはさておき、このCMは2006年の10月から放映開始になったのですが、「ポッキー」と「新垣結衣」の検索数が見事にシンクロしています。その一方で「グリコ」というメーカー名の検索数は変化がありません。CMを見た視聴者が検索フィールドに入力するのは商品名(ブランド)かタレント名かであって、メーカー名ではないということも示唆しています。

 実際には「新垣結衣」はこの少し前(7月頃)から検索数が伸びています。おそらくこれは「マイ★ボス マイ★ヒーロー」というドラマの影響でしょう。また、年末以降はリクルートなど他社のCMにも引っ張りだこになっている状況があるので、今ではそれほどシンクロしていないかもしれません。

CM放映開始直後のキーワード検索数

 しかしCM放映開始直後に「ポッキー」というキーワードの検索数が圏外からいきなり伸びているのは興味深いです。「ポッキー」自体はそれ以前もCMは流れていますので、話題になるCMさえ作れば生活者はこれだけ反応することの証明にはなっているでしょう。

 もちろん、これだけ著実に結果が出るのは特定のCMだけです。すべてのCMでここまでのインパクトは見られないと思います。ただ何人かのテレビCMを投下されている企業の担当者から話を伺う限り、テレビCMとWebサイトのトラフィックは確実に相関があります。

 また、これはCMだけに限りません。筆者が前職の時に、テレビの生放送で電話インタビューに答えたことがあるのですが、2~3分の放送だったにも関わらず、しかもトップページが一瞬映っただけでURLが出なかったにも関わらず、通常を大きく上回るアクセスがありました。まだまだマスメディアの影響力は大きいのです。

テレビCMはハイリスク・ハイリターンの広告商品

「テレビCMの影響力が弱まっている」「費用対効果が悪い」という指摘は単体でのROIで考えればわからなくもないのですが、こうして検索回数の上昇など具体的な反応がある以上、しかも「ポッキー」のように大きな反応があることを考えれば、とても崩壊したとは思えません。それに、効果がないテレビCMがあったとしても、そんなのはすべての広告に共通した話です。Yahoo!のブランドパネルに出稿しても全く効果がないこともありますし、AdWordsに何百万、何千万と投下してもコンバージョンしないことだってあります。

 うまくいかない広告(お金の無駄だったと後悔する広告)は媒体に関係なく存在します。テレビCMの場合、(失敗した場合を考えると)金額が大きすぎるというリスクは確かにありますが、ただこれは投資と考えればよくあるハイリスク・ハイリターンの広告商品に過ぎません。SEMのようにローリスク・ローリターンな広告商品もありますし、あくまでも組み合わせの問題だと筆者は考えます。

 ホリスティック・マーケティングとは、各チャネルの長所短所を見極めて、それが自社の見込み顧客に届くのか、その方を購入にナビゲートできるのか、さらには彼らがクチコミを発生させてくれるのかを考え抜いて、最適な組み合わせを選び実施することです。

 テレビCMが使えるなら使えばいいのです。成功すると、本当に大きな効果が得られます。でもテレビCMだけではまず売れません。公式サイト、公式ブログを準備し、SEMなどを実施して検索する生活者を確実にサイトへ誘導することはAISAS時代には必須でしょう。さらに最終誘導先(顧客の購入場所)をネットにするのか店頭にするのか、それによってもプランニングは変わってきます。

 繰り返しになりますが、テレビCMの効果は10年前と大差がなく、別に崩壊などしていないということです。そして「○○を検索」なんて画面に出さなくても生活者は気になるCMを見れば検索するということも忘れないでおきましょう。

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この記事の著者

河野 武(コウノ タケシ)

1974年7月3日生まれ。立命館大学経済学部卒。コミュニケーション・デザイナー。マーケター。企画屋。
1997年、ニフティ入社。2001年にニフティ退職後、フリーターとして数年過ごし、2004年から2005年までオンライン書店ビーケーワンの専務取締役兼COOを務める。ECサイト初となるトラックバックを導入し、また「入荷お知ら...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2007/05/08 12:49 https://markezine.jp/article/detail/1140

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