メッシュビジネスの背景にあるもの
これらのサービスが活気づく背景としては
1)長引く経済危機をきっかけに、古い企業体質に対する不信感が募った。
2)そしてそれが、自分にとって果たして最も価値があり重要なものは何か再評価する機会を与えた。
3)一方で、環境の変化がビジネスコストを高騰させ、使い捨て商品の製造販売もその例に漏れなかった。
4)また、多くの人が都市圏に住まうようになり、メッシュビジネスが可能なボリュームを生んだ。
5)情報ネットワークの成熟により、個人が必要なときにより良い形でサービスを利用できるようになった。
このような状況があると著者は言う。その結果、モノを所有することを放棄し、共有できる人とのアクセスを重視し始めた、と。
この辺は、消費者の環境に対する考え方も少なからず関係しているかもしれない。ただ、そもそも常に持っておく必要のないモノをレンタルですまそうという考え方は、言ってみれば図書館やホテルはそうだし、件のカーシェアリングについてもレンタカーサービスは昔からあったわけで、何も今に始まった訳ではない。
にもかかわらず、にわかにこうも賑やかになってきているのは、一にも二にもウェブの普及と共にソーシャルメディアによるネットワークが急速に拡大したことと無縁ではないだろう。距離をはるかに超えてより多くの人と人が繋がり一定のボリュームを超えたことで、「共有」を核とするビジネスの可能性を高めたと考えられる。
著者はさらに言う。「使われない価値とは、イコール無駄ということ。自然界では、ある生物体系の無駄は他の体系の食物になる。決して無駄のまま終わらない。ビジネスにおけるその試みは、使われていない車や道具のような、すべての生活領域における無駄から、いかに価値を再生するかだ。メッシュビジネスは、無駄を価値として再生しうる。」
モノの消費を根本から見直そうという消費者の意識変革は、今あるこの社会自体の姿を根底から書き換える可能性がある。そこに新たな共同体を生み出し、一定の市場を形成するのはごく自然な成り行きと思われる。続々と現れるメッシュビジネスが、無駄を価値に変えて、我々のよりよい未来へのロードマップを示してくれていると言ったら大げさだろうか。
メッシュビジネスのスイートスポットはここ
さて、そうしてソーシャルメディアが話題にのぼるとき、ややもすると「情報」をシェアすることだけに意識が向きがちだ。しかし、重要なのはその機能をいかに活かすか。この本からはソーシャルメディア自体をプラットフォームとして活用し、ユーザーの生活に欠かせないモノやサービスをシェアするビジネスモデルのヒントが多く得られる。
例えばひとつ参考になるのは、所有と共有を相対的に見てメッシュビジネスのスイートスポットを定義した下図。
使用頻度が低くてコストのかかるモノ・サービス、ここがスイートスポット。
「地球は究極の共有プラットフォーム」という著者の言葉が、これからのビジネスモデルの可能性を如実にかつ端的に語っている。上図をよく吟味してみれば、あなたが既に持っているリソースの中にも、新しいビジネスモデルが潜んでいるかもしれない。さて、どうだろうか。
なお、同様の趣旨の書籍"What's Mine Is Yours"の日本語訳版が12月に出版されます。"The Mesh"についても未確認ですが邦訳が近々出版されるとの情報もあるので、次のビジネストレンドをお知りになりたいのでしたら、こちらも是非一読をお薦めします。
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