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MarkeZine Day 2011 Springレポート(AD)

「重要なのは、入口・出口をいち早く把握・分析すること」 ネットマーケティングをビジネス成果に結びつける方法

 ベルサール神田で開かれたMarkeZine Day 2011 Springには、複雑化するユーザとのコミュニケーションで悩む、多くのマーケティング担当者が集結した。今、求められている“ユーザ中心”ネットマーケティングとは、いったい何なのか。株式会社ビービット 遠藤 直紀氏による講演が行われた。(バックナンバーはこちら)

求められるのは“顧客中心主義”への転換

 冒頭、遠藤氏はネットマーケティングは成熟期に入っており、成果を上げるネット施策を実行していくためには、“ユーザ中心”のネットマーケティングが不可欠である、と主張した。

株式会社ビービット 遠藤 直紀 氏
株式会社ビービット 遠藤 直紀 氏

 顧客中心企業が勝ち組となる時代へシフトした今、マーケティング担当者の思考そのものが見直されるべき時を迎えているのかもしれない。遠藤氏は、その事実を示す明白な事例として、米国で発売されている2つの関数電卓を挙げた。

講演資料より掲載
(Copyright (C)2010 beBit,Inc. 掲載画像の全部、または一部の無断転載を禁じます。以下、同)
講演資料より掲載(Copyright (C)2010 beBit,Inc. 掲載画像の全部、または一部の無断転載を禁じます。以下、同)

 最初に生産を開始したのはCasioであり、価格も安く、技術的にも使いやすさ的にも、勝っている。しかし、市場ではTexas Instruments(TI)の方が圧倒的に売れており、1位を独走する状態だ。どうしてか? それはマーケティング戦略の違いに大きく起因している、と遠藤氏は説いた。

 Casioは購入者である生徒とその両親をターゲットとし、「速度、効率性、安定性などの製品が持つパフォーマンス」「製品の費用」を重視したのに対し、TIは生徒の購入に影響を与えるキーパーソンである先生をターゲットにし、そのニーズを満たすために「先生のコミュニティに入り込む」「先生のPCとワイヤレスで接続できる機能」「先生と生徒の情報連携機能」という点を重視したのだ。

 関数電卓を使用するのは生徒だ。だが、その生徒は先生の助言を元に購買を決定しており、TIはキーパーソンである“先生”が求めるニーズを満たすことに、徹底的にこだわった。

 製品中心主義の時代では、優れた製品を作れば自然と顧客が集まるため、売上や利益を成果指標として、シンプルな販売活動をすればよかった。けれども、市場が成熟している今となっては、製品はコモディティ化しており、それにともなってユーザのニーズも多様化している。「ユーザのニーズを中心に据えた企業活動こそが、最終的なビジネス成果を掴む鍵となるということを、現実として受け入れなければならない」(遠藤氏)

マーケティング担当者が抱える問題

 また、今のネットマーケティングを取り巻く環境について、遠藤氏は次のように指摘する。

 「日々お客様と接する中でよく耳にする言葉は『成果向上へのプレッシャーが強い』という言葉です。これらのプレッシャーから数多くのキャンペーンを回す必要が発生し、かつソーシャルなどの新しい取り組みにも行っていかなければならない状況になっています。運用も複雑となり効果測定も当然必要となるので、その結果、従来に比べ業務が膨大になっています」

 そして、業務が膨大になることで次のような悪循環も起こっているという。

 「業務が膨大、かつ複雑化することで顧客のニーズを見ることを怠り、獲得単価など効率重視の運用しかできないため、成果が頭打ちになります。頭打ちになっても顧客に目を向けていないため、なぜその結果になったのかが分析できず、次のアクションにもつながりません。結果、流行りの施策に飛びつくという悪循環も起こっています」

 これらの問題を解決して長期的な成果の維持向上をするためには、今までのパラダイムを捨て、“ユーザ中心PDCA”を効果的かつ迅速に回していく必要がある、と遠藤氏は語る。

 “ユーザ中心PDCA”は、まず成果・ゴールを明確にすることからはじまる。「自分たちが目指す成果は何なのか」という“出口”を明確にして、そこから「その成果を上げるためには、どういうお客様を大切にしないといけないのか」という“入口”を設定する。この“入口と出口”の分析からユーザを理解し、コミュニケーションシナリオを策定していくのだ。ユーザ中心PDCAの具体的な実践方法は前回のレポートで解説しているのでそちらをご覧いただきたい。(ユーザー中心PDCAがマーケティングROI向上を現実化する!成果10倍を叩きだす、PDCAアプローチ

いち早く大局を把握するための入口・出口分析

 ここからは、入口・出口分析を行うことで大きな成果向上を実現した事例を紹介しよう。

 ユーザ中心PDCAでは、大局をいち早く把握しユーザシナリオの最適化を進めていくために、入口(ターゲットユーザ)とそれぞれの出口(成果指標)を追い、ユーザシナリオごとの成果を把握することを勧めているが、サントリー酒類が実施した角ハイボールのキャンペーンは、入口・出口分析を実践したことで大きな成果につながったという。

 このキャンペーンでは、角ハイボールの飲料体験者の増加をゴールとしていた。キャンペーンサイトでは、そのお酒が飲める飲食店の特集を行い、さらにユーザーへのインセンティブとしてクーポンを発行しリアル店舗への来店を図る、といったキャンペーン設計を行っていた。キャンペーンの効果を測定するためのツールはビービットが提供する広告効果測定ツール「ウェブアンテナ」を利用していたという。

 しかし、クリック数はあるにも関わらず、コンバージョンとして設定したクーポンの発行数が伸びない。そこで、「ウェブアンテナ」を使いコンバージョンに至ったユーザを調べてみると、「渋谷」「新宿」など地域名が多く、このシナリオを強化すべきではないかという新たな仮説が導かれた。

 つまり、クーポンの発行数が伸びなかったのは、「角ハイボール」で検索する人がサイトに来てクーポンをダウンロードするという仮説自体が間違っていたことに要因があり、新たな仮説のもとユーザーシナリオの変更をすばやく行ったのだ。改善策としてはリスティング広告の出稿ワードを変更したり、SEO対策を変更するなど、入口を見直した。その結果、予想以上の成果につながったわけだ。(サントリー酒類事例記事:月次→週次に意思決定スパンを劇的改善“大企業”サントリー酒類が超速PDCAを回せるワケ

マーケティング担当者のあるべき姿

 ほとんどのマーケティング担当者は、データチェックや効果検証の準備作業に時間が割かれ、成果を上げるための分析・改善に時間を割くことができていない。本当に求められているのは、「どの施策がどれだけ成果に結びついたのか」ということだけだ。

 入口と出口を押さえることを最優先し、不要なデータにまみれる時間を削減すれば、“ユーザ中心PDCA”を回しながら、迅速かつ戦略的なコミュニケーション施策を打つことができるようになる、と語り、遠藤氏は本講演を締めくくった。

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この記事の著者

野本 纏花(ノモト マドカ)

1983年生まれ。成蹊大学経済学部卒業。大学卒業後、大手IT企業にてレンタルサーバーサービスのマーケティングを担当。その後、モバイル系ベンチャーにてマーケティング・プロダクトマネージャーを務める傍ら、ライター業を開始。旅行関連企業のソーシャルメディアマーケターを経て、2011年1月Writing&Marketing Com...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2011/07/11 20:33 https://markezine.jp/article/detail/13613