ツールを提供しながら中小企業の海外進出サポートに注力
日本と言えば輸出立国というイメージがあるが、実はGDPに占める輸出の依存率は低い。国際通貨基金(IMF)の「International Financial Statistics Yearbook 2009」によると、日本の輸出依存度は16.1%となっている。中国(33.0%)や韓国(45.4%)といったアジア諸国、フランス(21.1%)やドイツ(39.9%)といった欧州の代表的な国などと比べて低い水準だ。
AdWordsを使った活動だけを切り取ってみても、国外に市場を求める動きは中国などでは活発になっている。グーグルが紹介している海外進出企業の事例を見てみても、国内競争が激化したため国外に販売機会を求めて成功した花屋の事例、国内景気の低迷を受けて国外でのECを強化した電器屋など、中小企業の中からも成功事例は出てきている。にもかかわらず、日本は今まで国内の市場だけで円滑に循環していたため、海外に目を向けようという動き自体が広まっておらず、国外向けのAdWords利用も、まだあまり多くないというのが現実だという。
海外の大手メーカーに部品を輸出している企業などはあるが、それ以外の分野、例えば地場の飲料や食料品、化粧品などの輸出活性化の支援を、啓蒙も含めて行っていきたいという。「グーグルは、日本国内の需要だけでなく、国外に市場を求める中小企業をサポートできる、数少ないパートナーだ」と王子田氏も意気込む。
そのためのツールの提供も、既に開始している。その1つが「グローバル マーケット ファインダー」だ。自社商品・サービスとの関連が深いワードは、世界各国でどれくらい検索されているかを確認することができる。例えば抹茶を売ろうとする。まずは国・言語を「日本」「日本語」と指定して、続いてキーワードで[日本 抹茶]と入力。狙っているマーケットを選ぶと指定ワードを国・地域別の言語に翻訳した上で検索ボリューム(≒市場規模の目安)と推奨入札単価(≒広告単価の目安)、競合性(≒競合する広告主数の目安)を表示し、市場としての可能性を評価できるようになっている。
検討している市場での検索ボリュームや、競合の有無、入札単価などが分かる

また、IAB EuropeやTNS Infratestと共同開発した「Consumer Commerce Barometer」というツールも提供している。さまざまな商品に対して、ユーザーがどのようにインターネットで商品を検索、購入しているのかというデータを把握できるツールだ。
国、年齢層、性別、インターネットの使用頻度、扱う商品/カテゴリ、購入・情報収集手段などに関するアンケート調査項目を選択することで、
その属性のユーザーがどの位いるかを知ることができる

中小企業が商材を持っていて、どこに輸出しようかと考えた場合、様々な可能性がある。『経済力を付けている中国』『親日だからトルコが良いのでは』といった推測で物事を進めるのはリスクが高い。そうではなく、こうしたツールを使って『イギリスは関連キーワードの検索数が多い』『ロシアは競合が少なく入札単価が安くて済む』といったデータを参考にし、対象となる市場が見えたらGoogleウェブサイト翻訳ツールで試しに翻訳をして、トラフィックを調査してみる。収益が見込めそうであれば、きちんとローカリゼーションを行い本格的にビジネスを行っていく。このようなGoogleの使い方を提案していきたいという。
Googleが世界で持っているユーザーとインフラ。そのグローバルな面を活かすために、サポートする体制・ツールを整え、AdWordsを活用することで海外進出できると認知してもらうことが当面のミッションになっているようだ。
マッチングの質と、マッチングの仕方を一歩ずつ前進させる
AdWordsを今後ますます成長させていくため、中小企業を中心に新規顧客を増やし、海外進出という新たな利用ニーズの認知も広げていきたいというグーグル。AdWordsのシステム自体をどのように進化させていく考えなのか。王子田氏は「広告はある種のマッチングを行う場」だと語り、AdWordsによってマッチングの仕方を一歩ずつ改善させていきたいと話す。
「エンドユーザーがキーワードを入力することによって、検索結果という場所が意味のある『コンテクスト』として成立しているわけです。そのコンテクストの種類を少しずつ広げていきたいと考えています。先ほど紹介したClick-to-Call広告でコネクションの仕方、マッチングの仕方が一段変わった。ものすごく新しい機能を突然リリースするのではなく、このようなものを1つずつ積み重ねていきたいと考えています。
もう1つこだわりたいのは『マッチングの質』です。マッチングの質が一度下がってしまうと、せっかく意味のあるコンテクストとして成立した場が荒れてしまい、得られたはずの成果を得られなくなっていってしまう。そうすると花も咲く、木も育つというところが育たなくなってしまう。そうならないように、我々だけではなく、業界全体としてやっていくことが、とても大切ではないかと考えています」(王子田氏)

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