生活者の人格を宿したAIエージェント
AIエージェントの活用に注力するアクセンチュア。同社のデータサイエンス部門でマーケティング領域をリードする山崎氏は「単一のAIエージェントを活用するだけでは間違いが起こり、効率化も進まない」と語る。
製造・流通業、ライフサイエンス領域、製薬業界、公共サービス領域におけるマーケティング、R&Dのアナリティクスに精通。高等アルゴリズム構築・多変量高次元解析を武器に企業価値向上に貢献。マーケティング、R&Dのアナリティクスにて、会津大学客員講師を兼任。関連著書や1st論文の執筆多数。
「人間が複数のメンバーとチームを組成するごとく、営業に特化したAIエージェントや経営に特化したAIエージェントなどを組み合わせてディスカッションさせるマルチエージェントの考え方が有効です」(山崎氏)
マルチエージェントを機能させるポイントは、生活者の人格を宿した複数のエージェントを構築する点にあるという。そのようなエージェントと対話を重ねることで、生活者の悩みやニーズを引き出せるためだ。
仮に生活者エージェントを1億人分構築して、それらが自己進化を続ければ、その性能は「人を超える」と言われている。ただ、マシンスペックには限界があろう。「一日あたり約1,000人のAIエージェントは構築可能だが、1億人となるとマシンがパンクする」と山崎氏。量子コンピューティングの進化にともない、将来的には1億人のAIエージェント構築が実現可能になるかもしれない。
業務効率化から経営の意思決定まで
アクセンチュアでは、顧客企業のマルチエージェント化をどのように支援しているのだろうか。山崎氏曰く、マルチエージェントの活用には大きく3段階あるという。第一ステップは「社内オペレーションの自動化」だ。たとえばマーケティング、企画、営業支援の各担当者がマルチエージェントと協働することにより、自動化・効率化を進める。
第二ステップは「事業経営・意思決定」だ。経営者がマルチエージェントとディスカッションすることにより、CxOレベルのアジェンダを解決する。そして第三ステップが「顧客理解・施策創出」だ。生活者や消費者をエージェント化し、営業担当者やマーケティング担当者がそれらとディスカッションしながら顧客のニーズを引き出す。
企業がAIエージェントを構築する際、自社データを学習させる方法が一般的だろう。アクセンチュアに支援を依頼すれば「SNSのデータのほか、弊社が保持している家計簿のデータなどを基に生活者エージェントを構築できる」と山崎氏は語る。
「通常、AIエージェントを構築する際はRAGというLLMで情報を集約しますが、このようにして構築された生活者は生活者らしくありません。生活者は分散的で非合理な考え方をします。そのような生活者を再現するためには、脳の記憶構造を模したマインドマップの構築が有効です。複数のAIエージェントで『あなたはこのような記憶構造を持つ人物です』と指定することにより、生活者のニーズや不満などを引き出すことができます」(山崎氏)

