リアル店舗とモバイルユーザーを結び付ける
mobionがなぜこのような仕組みを設けたのかというと、リアル店舗を持つ企業が、ネットマーケティング、特にモバイルマーケティングを有効活用できていないケースが多いためだという。外食産業などは長い不況などの影響により、現在売上が大きく下がっている状況だが、インターネットを活用したマーケティングというと、B2B向けにWebサイトを構築する程度で、あまり有効に生かしているとはいえない状況であった。
一方携帯電話の所有者は日本で1億人以上にのぼるが、それを用いてネットコンテンツを利用しているのはモバイルに対するリテラシーの高いユーザーのみであり、大手コンテンツでも2000万強程度。通話以外に活用していない人がまだまだ多いという。
こうした2つの背景から、メディアやコンテンツを提供する企業がユーザーとリアル店舗を結び付け、3者がWin-Win-Winの関係を構築できるようなビジネスを構築できないかと考えたのが、mobionの構想の発端であるという。
店舗からソーシャルメディアへと誘導するという、現在のmobionの仕組みは、モバイルを利用した販促で成功を収めた、ある飲食チェーン店の事例が参考になったという。この企業は100万単位のモバイルで会員を集めるなど成功を収めたことから、フランチャイジーの店舗にもそれを導入することとした。
しかし当初は、会員に向けたメールマガジンの配信数などに応じてシステムの金額が高くなるという仕組みになっていたことから、会員を増せば売上は上がるが、同時にコストがかかってしまうという問題を抱えていた。そこで会員向けコンテンツをメディア化することでその問題を解消し、コスト削減したのだという。
この事例を見て、GNTの代表取締役社長であるホー・トゥン・ラム氏が、飲食店だけでなく小売業など全てを巻き込んで、同様の仕組みを提供することができないかと考えた。そこで生まれたのが、mobionの現在のモデルであるようだ。
とはいえ、最初からソーシャルメディアという形でスタートした訳ではない。当初は店舗のソリューション事業としてスタートしており、2008年からジョイフル、ロッテリアなどの飲食店チェーンを中心として、店舗個別に無料でソリューションを提供。モバイル会員を募り、会員サイトをメディアとして活用するという手法を展開していった。それを2009年夏から順次一本化を進め、同年12月に現在のmobionの形に集約したのだという。

大規模チェーン店中心に展開、需要は飲食店から小売店へ
リアル店舗のモバイル会員というと「飲食店のクーポン」というイメージが強いという人は多いことだろう。mobionの提携店舗も当初は飲食店中心であったが、この1年でその動向は大きく変わってきているという。
というのも、引き合いがある店舗のうち、小売店が半分ぐらいを占めるようになってきているのだそうだ。mobion 3Sの小売店への導入実績としては、100円ショップの「ダイソー」をはじめ、カラオケ店や漫画喫茶などのチェーン店などが挙げられる。またこの1年で、中堅クラスのコンビニエンスストアや、ドラッグストア、アパレル、クリーニングチェーンなどで導入が増えてくるのではないかという。
mobion 3Sの導入を提案しているのは、主に大手のチェーン店となっており、目安としては50店舗以上で、年間で会員数が5万人くらい集められそうなポテンシャルのある所になるという。ソリューションは無料で提供し、ソーシャルメディア上で収益を上げるというビジネスモデルであることから、集客が見込める大手の企業を中心に展開しているようだ。
とはいえ、中小の店舗にもモバイルを活用したビジネスニーズは存在することから、現在の形とは限らないが何らかの形で進出を検討しているという。
