“現場を理解したシステム”と“データの可視化”
飲食・小売店がモバイルを多く活用するようになったのはここ1、2年のことだが、GNTによると実際はもっと早くから取り組み自体はなされていたという。ただ費用対効果に見合う成功例が少なく、普及が進まなかったのだそうだ。
では、mobion 3Sが多くの企業に利用されている理由はどの辺りにあるのだろうか。その1つは、その業種・業態の現場を理解した上でシステムを導入することだという。
飲食・小売り・サービス業などでネットやITに精通している人は少ないことから、現場の仕組みを理解して、システムの用件定義をするのは難しい。一方多くの受託企業は、仕事を受注してシステムを納品すれば、契約期間中の収益が立ってしまう。そのため、システムそのものが受託企業の思うがままになってしまうことが多いようだ。
だが、こうした業界の現場は非常にアナログな世界であり、その組織のマネジメント体系やオペレーションをしっかり理解した上でのシステム構築や導入が求められる。特に飲食店などは、現在のオペレーションを一切変更することなく効果をもたらすことが求められることから、各企業の現場環境に合わせたシステムの提供をしているのだという。
そしてもう1つは、成果を可視化することだという。先に上げた通り、多くの受託企業は、店舗の売上と関係なく収益が立つことから、店舗に対しては契約更新のタイミングまで何もしてこないことが多いとのこと。
だがmobion 3Sでは、会員獲得数やそれが会員の売上貢献度を数値化する仕組みを持っており、1人当たりの会員獲得が、売上にどれくらい貢献しているかというのを可視化し、月次で共有しているのだそうだ。こうした情報を毎週店舗にレポートし、成果を見せることによって、その効果を実感してもらい、より成果を上げるための取り組みに結び付けることができるようになるのだという。
リアル店舗において最も重要なのは、売上にどうつながっているかという所である。元々システムは無料で提供していることから、“無料で売り上げが上がる”という実績を見せることで、協力関係を結びやすいようだ。
割引クーポンに依存しない店舗会員向け施策とは?
多くの店舗のモバイル会員サービスが実施されるようになったが、会員向けサービスや施策を見ると、値引きクーポンに依存する傾向があるように見える。
一方で、値引きクーポン以外に、モバイル会員に向けた効果的な施策は難しいようにも感じる。だがmobionと提携している店舗の中には、厳しい原価率でビジネスをしていることから、クーポンを発行していない所もあるという。そうした場合、どのような目的で会員になるのだろうか。
この部分においては、mobionというメディアの特性が大きく働いているようだ。例えばmobion経由で発行されるメールマガジンには、リンクを選択してポイントがたまるなどの仕組みが設けられているほか、会員サイト内の掲示板の新しいトピックが掲載されていることなどから、通常企業が発行するメールマガジンより付加価値が高められており、それが開封率の向上につながっているという。
先に上げた、mobion内の会員コンテンツにおいて提供されている、掲示板などのコミュニケーションサービスも重要な要素となっているようだ。ダイソーを例とすると、100円で購入した商品をアレンジして雑貨にしたり、手作りのお菓子を作ったりするなどして発表しているのに加え、それに対しマーチャンダイジング担当者が「この商品を使ってみたらどうか」という商品提案をするなど、インタラクティブなコミュニケーションが働いていることが好評を得ているという。
またmobion内で提供されているソーシャルゲームにおいても、例えば商店街育成ゲームの「つくろう!みんなの商店街」であれば、訪れた店舗の会員に登録しておくと、そのお店の店舗がゲーム内でも建てることができるなどのタイアップを実施。コンテンツ内でその店舗ブランドをより有効活用する仕組みを設けている。
ソーシャルメディアというmobionの特性を生かし、店舗と連動した魅力的なコンテンツやサービスを用意すること。これによって、割引クーポン以外の要素で集客できる価値を生み出しているといえよう。
「ちよだ寿司」とコラボレーションを実施した事例

