パンダ・アップデートでeHow.comのトラフィックはどう変わったのか?
eHow.comの中身についてざっと触れてみたところで、パンダ・アップデートによってeHow.com、そしてDemand Mediaがどのような影響を受けたのか調べてみよう。
データの精度はともあれ、傾向値を捉えるために、alexa.comを使ってeHow.comのトラフィックをグラフ化してみた。

きれいな右肩上がりの成長を続けていたものが、2度目のパンダ・アップデート(以降、パンダ2)が実施された前後の4月上旬に急落。4分の3程度にトラフィックが落ち込んでいる。
参考として、ノウハウ系サイトの本家「米about.com」のトラフィックの推移も並べてみる。about.comも微減しているようだが、大勢には影響がない。やはりeHow.comのようなサイトがダメージを受けているのは間違いない。

金融マーケットの動向を分析する情報サイト「Seeking Alpha」に投稿されたティム・チェン氏の分析によると、約5000のキーワードでeHow.comが1ページ目(上位10位以内)に表示された件数は次のように推移しているそうだ。
2月19日 | 1680ワード |
3月2日 | 1892ワード(パンダ1後) |
4月10日 | 1996ワード(パンダ2以前) |
4月16日 | 1341ワード(パンダ2後) |
パンダ2までは想定内もパンダ2.2で再打撃
パンダ・アップデートの情報が事前に出回っていたことから、金融マーケットではDemand Mediaの業績に対する不安が広まっていたようだ。パンダ・アップデートのたびに株価は急落。4月初旬には25ドル近かったのが、2週間ほどの間に15ドル前後まで落ち込んでいる。

しかし、Demand Mediaはパンダ2後の4月18日に声明を発表。2011年通期の業績予測は変わらないとし、ゴールドマンサックスも6月14日には「中立」から「買い」へとDemand Media株式への評価を引き上げている(ゴールドマンサックスはDemand Mediaの主幹事証券でもある)。
一度は落ち着いて反転に向かったかと思われたDemand Media。しかし、それも一時的なものだったのかもしれない。2度あることは3度ある。6月下旬に再度パンダ・アップデート(2.2)が行われたのだ。
先ほどのティム・チェン氏の分析によると、その影響は下記の通り。
6月17日 | 1216ワード(パンダ2.2以前) |
6月18日 | 924ワード(パンダ2.2後) |
alexa.comで見ても、さらに4分の3程度にトラフィックが減少し、最盛期の3分の2ほどになっている。

なお、前述のSECに提出された書類によると、eHow.comのトラフィックは約40%がGoogle、Bing、Yahoo!などの検索エンジンによるもの。Alexaの精度に全面的な信頼は置けないが、相当の影響はあったと言えるのではないだろうか。
こういった背景もあってか、Demand Mediaの最近のプレスリリースを見ると、各業界の著名人などと組んだコンテンツをリリースする、リッチなコンテンツを推奨する仕組みを導入するなど、コンテンツ強化の取り組みが多々見受けられる。Demand Media側も対応策を打ち出し始めているようだ。
eHow.comが狙われたのは別の理由?
パンダは3度ならず4度来るのだろうか。Googleがそこまでコンテンツファームを狙い打つ理由は、単にコンテンツの質の問題だけでないのかもしれない。
例えばDemand Mediaの場合、eHow.comなどのメディア運営をする一方、ドメイン登録業者としての事業も展開し、売上の3分の1はそれによるもの。2010年7月27日にSEO BOOKというサイトに投稿された記事では、期限切れドメインを301リダイレクトでeHow.comに飛ばすことでSEOを強化したと報告されている。
前述のティム・チェン氏は、この行為がGoogleのポリシー違反に当たり、Demand Mediaが狙われているのはそのせいかもしれないと指摘している。
日本でもパンダ・アップデートの影響がどの程度になるのか、不安視する人もいるかもしれない。だが、eHow.comは攻撃対象になっても、about.comはパンダをやり過ごしている。不安がるよりもまず大事なことは、eHow.comのようにコンテンツを量産するのではなく、コンテンツをキチンと整理していくこと。そしてルール破りをすることなく、良質なコンテンツを粛々と作っていく、という極めて王道の対策を進めていくことではないだろうか。