パンダ・アップデートで狙われたDemand Media
春先から「パンダ・アップデート」というキーワードを目にする機会が多くなった。周知の通り、Googleによる検索アルゴリズムの更新を指す言葉だが、質の低いページが不当に上位表示されるのを防ぐ目的があると言われている。
パンダ・アップデートによって検索順位を下げられたのは、具体的には「コンテンツファーム」のページだという。コンテンツファームが問題にされているのは、自動生成されたコンテンツや、既存のものと内容が酷似しているコンテンツなど、ユーザーにとってあまり役に立たない情報が多いところ。にもかからず、とにかくページ量が多く、検索エンジン向けの上位表示対策が施されているため、ロングテールからの流入が多いのだ。
その中でも、特にGoogleの標的になったと言われているのが「Demand Media」という企業。同社は「eHow.com」「LIVESTRONG.COM」「Cracked」「typeF」といったサイトを運営している。
Googleが危険視するコンテンツファーム、Demand Mediaが運営するサイトの中でも代表格の「eHow.com」とはどのようなサイトなのだろうか。今回は、Demand MediaおよびeHow.comを分析してみたい。
記事・動画の本数は200万本以上! 米国で12番目に巨大なサイト
日本ではあまり知られていないかもしれないが、Demand Mediaは今年1月26日、ニューヨーク証券取引所に上場した企業だ。
3月3日には1株24.57ドルと最高値を付けている。株式数が約8321万株ということなので、その時点での時価総額は約20億ドル(約1600億円)。乱暴な比較であることを承知の上で日本の有名な企業と比べてみると、6月30日時点でQ&Aサイトを運営するオウケイウェイヴは約29億円、専門家によるノウハウ記事を多数そろえるオールアバウトは約41億円という時価総額になっている。
eHow.comのビジネスモデルは、サイトの広告収入によって稼ぐというもの。Demand Mediaの2011年1~3月期の決算を見ると、eHow.comをはじめとする各種情報サイトの運営による売上高は四半期で5190万ドル(約42億円)となっている。
また、アメリカ証券取引委員会(SEC)にIPOのために提出されたレポートによると、AdSense広告など、Googleから提供される広告による売上がかなりの割合を占める。2010年1~6月は約26%がGoogle経由の売上だったようだ。
もちろんDemand Mediaには、それだけの時価総額・売上高に見合う価値がある。Demand Media運営サイト全体のアメリカにおける月間ユニークユーザー数は7654万人。アメリカで12番目に巨大なサイトになっている(どちらもcomScore Media Metrixによる2011年3月のデータ)。
Demand Media、その中でも主力のeHow.comがそこまで巨大なサイトに成長した背景には、膨大なコンテンツを抱えているという事実がある。eHow.comのサイトに記されているところによると、サイト内の記事・動画の本数は200万本以上にのぼる。
なぜ、それほどのペースで量産できたのだろう。それは“フリーランスのライターを募り、対価を支払うことで記事を書いてもらう”という仕組みを整えているからだ。
Demand Media全体で抱えているフリーランスのクリエイターは1万3000人以上。ライター、フィルムメーカー、コピーライター、ブロガーといった枠で募集を行っている。例えばライターは、「1記事いくら」という報酬体系か、レベニューシェア型の報酬体系(執筆記事のページビュー/該当カテゴリ/掲載サイトの種類といった要素によって変動)で対価を受け取る契約だ。
また、膨大なコンテンツをただ闇雲に量産しているわけでもないようだ。SECに提出された資料によると、さまざまなソースからユーザーの検索クエリの情報を集め、検索トレンドを見極めてどのようなコンテンツを作成すれば良いかを判断する材料にしているという。