ECサイトは高度に標準化されている
1993年に広島の企業が開始したインターネットでの洋書販売が、日本で初めてのECサイトであった。
それから約18年が経ち、ECサイトは多くのユーザーの買い物行動によって、また、多くの先人たちの知恵によって最適化されたものになってきている。現在のECサイトは、一朝一夕にできたものではなく、効率化・売上拡大を目指す企業によって創られてきた、標準化された買い物装置でもある。特に買い物カゴ以降の遷移は、その最たるものだ。言い換えれば、世の中のECサイトが採用している基本的な構造・情報設計は、多くのユーザーが利用してきた結果でもある。
従って、他社の多くには存在するが自社には存在しない要素がある場合や、あまりにも斬新な構造・情報設計に対しては、ユーザーに新たな学習体験を強いることになるため、購入ハードルが高くなる可能性がある。使いやすいECサイトというのは、ある程度標準化されている必要がある。
この回では、顧客マネジメント戦略を構築するうえで前提となる“ECサイトの店構え”について考えてみたい。
ECサイトのコンセプト
ECサイトの基本的な構造や情報設計が標準化されていくなか、実店舗や他のECサイトではなく、自社のECサイトで購入してもらうためには何が必要なのだろうか?
まず重要なのは、コンセプトである。コンセプトは、ECサイトのサービス、基本的なデザインや雰囲気、ページ構成、機能、コンテンツを決定づける骨子となる部分である。販売する商品からターゲットを明確にした上で、どのような価値・サービスを提供するのかを決めることである。例えば、次のようになる。
例1)日本で一番親切なメーカー公式ECサイト
商品情報をどこよりも親切に(商品写真はどのサイトよりも大きく、多く掲載)、サポート情報をどこよりも親切に(サポート情報まとめページを制作してグローバルナビゲーションに設置)提供するメーカーの公式ECサイト。ユーザーに商品だけではなく安心・安全な買い物体験を提供。
例2)顔のみえるECサイト
ショップ責任者の顔、ショップ担当者の顔、生産者・開発者の顔、購入者の顔とコメントをサイト上に掲載することで安心感があり、賑やかなECサイトに。実店舗で購入するような接客を表現することでユーザーに親近感のある買い物体験を提供。
また実際に、成功している大手ECサイトは、コンセプトが明確なところが多い。いくつか例を挙げてみよう。
遊べるECサイト(ヴィレッジヴァンガード オンラインストア)
企業情報・ECサイト情報から筆者が読み説いた限りでは、「遊べる本屋」というリアル店舗でのヴィレッジヴァンガードのコンセプトを活かし、書籍、雑貨、CD・DVD等を複合的に装飾的な陳列をして販売するスタイルをECサイトで実現しているようだ。実店鋪と同じように装飾的な陳列を行っている。商品を探す楽しみ、出会える楽しみといった買い物体験を提供している。
街から人へ(ZOZOTOWN)
使いやすさに重点を置き、自社コミュニティとの連携、SNSとの連携を中心にしたサイトへと、リニューアルした際の新しいコンセプト。現実の店舗に近い雰囲気を作ることで、安心して買物してもらえるように、という意図があるという。人の気配が感じられる人気ショップのような、賑やかな買い物体験を提供している。
このようにECサイトによって、様々なコンセプトが見られる。
コンセプト策定にあたっては、繰り返しになるが、“販売する商品からターゲットを明確にしたうえで、どのような価値・サービスを提供するのか”を決めることが重要である。企業価値・企業姿勢を提供する事に優位性がある場合は、そのままECサイトのコンセプトに落とし込めば良いし、ECサイト独自のコンセプトを決めて優位性をだしても良い。
重要なのは、実店舗でも他のECサイトでもなく、自社のECサイトで購入してもらうための理由付け(優位性確立)である。