動画マーケティングは本当に重要なのか?
ブライトコーブ社は、世界で50カ国3,000社以上の実績を持つ、オンライン動画プラットフォームのトップ企業だ。「今話題のスマートフォンを始めとしたモバイルデバイスと、ソーシャルメディアのマーケティング戦略を立てるうえで、動画というコンテンツは欠かせない」と語る川延氏。
しかし、企業の担当者にとってみれば「動画をうまく活用するのはなかなか難しい」というのが現状ではないだろうか。本セッションでは、どうすれば動画を使って効率よくマーケティング活動が行えるかについて、最新のデータや事例とともに、豊富な知見が披露された。
拡大する動画トラフィック
下のグラフは、Webトラフィック量を種類別に示したものだ。2010年度のものだが、既に動画のトラフィックは全体の50%を超えている。「スマートフォンの普及とともに、現在、この割合はさらに増えていることが予測される」と川延氏は語る。
さらに、オンライン動画の視聴数の分布(comScore調べ)を見てみると、「その他」が多いことが分かる。この「その他」が示すものは、企業が自社の運営するWebサイトやECサイトで、マーケティングや広報戦略として配信している動画。その割合は、YouTubeなど動画投稿サイトすべての合算値と比較しても、引けを取らないほどだ。
「既に動画がビジネスの一環として使われており、それがユーザーによって視聴されていることが分かります。動画マーケティングが普及し始めている証だと言えます」(川延氏)
動画マーケティングでクリアしなければならない6つのSTEP
次に、川延氏は動画配信の仕組みを理解する一助として、企業が動画配信を始める際の一般的なプロセスを説明した。順を追ってみていこう。
STEP1:PC
動画コンテンツを用意し、PCの自社サイトで動画を配信し始める。
STEP2:モバイル
時代の変化に対応し、スマートフォン/タブレット/モバイルWeb/モバイルアプリなど、配信対象とするデバイスを増やしていく。
STEP3:収入源
インターネットTVなどさらに配信先を増やしたり、課金モデルの構築を検討するなど有効活用の道を検討する。
STEP4:ソーシャルメディア
もっと多くの人に見てもらうため、Facebook/Twitterなど、ソーシャルメディアと連携させ、クチコミ効果を狙う。
STEP5:追加コンテンツ
動画コンテンツの追加や、従来のオンデマンド形式だけの配信に加え、ライブ配信を検討する。
STEP6:解析・分析
配信したものを解析・分析し、改善した上で、新たなコンテンツを配信する。
日々の業務に加え、これだけの過程をクリアしていくのは、企業担当者にとって相当重い負担となるのは、容易に想像がつくだろう。この問題を解決してくれるサービスとして川延氏が紹介したのが同社の「Brightcove Video Cloud」だ。大量の動画を一気にアップロードする、様々な動画フォーマットに対応するなど、動画マーケティングの運用をサポートする機能が詰まっている。
モバイルデバイスの伸長で複雑化する動画マーケティング
続いて、川延氏はモバイルデバイスにおける動画活用の現状や問題点について言及した。
スマートフォン市場は日増しに活性化しており、再来年には市場シェアがフィーチャーフォンを追い越すと言われてほか、米国の大手調査会社ガートナーによると「2011年にはモバイルデバイスを利用しているインターネットユーザーが、PCを利用しているインターネットユーザーを上回る」という予測もでている。また、「2011年のモバイルデータの60%は動画が占める」(Bytemobile)、「2013年までにスマートフォン経由の動画視聴トラフィックは66倍になる」(Quantcast)など、遅かれ早かれスマートフォンでの動画配信を検討すべき時が来ることを、複数の調査発表によるデータが示しているという。
しかし、スマートフォンへ動画を配信するにあたり、マルチプラットフォームに対応しなければいけないという点が問題になってくる。PCだけの時代であれば、ほぼ全てのOSやブラウザーで動くFlashで動画を作成していればよかった。けれども、iPhoneやiPadなどの非Flashデバイスも存在するため、HTML5でも動画を作成しなければならないのが現状だ。全く異なる2つの形式で動画を作成するのは、手間以外の何ものでもない。
加えて、スマートフォンサイトを作るか、アプリを開発するかという選択肢も考慮に入れなければならないと川延氏は語る。
「スマートフォンに最適化したWebサイトを作る方が、アプリを開発するのに比べて、いくぶんコストは抑えられるでしょう。しかし、アプリをダウンロードするというひと手間をかけてまで利用してくれるというのは、企業やサービスに対して、ユーザーが愛着を持っているということです。そうした潜在顧客を手放しにしておくのはもったいない」(川延氏)
いずれにせよ、ユーザーとのタッチポイントを逃さないためには、スマートフォン向けにもPCサイトと同等な体験を提供する必要がある。こうした悩みに応えるのが、「Brightcove スマートプレーヤ」だ。FlashとHTML5の一括管理を行うことができる。
ソーシャルメディアにおける動画活用
マルチデバイスに加え、もう1つの大きな課題といえば、ソーシャルメディアだろう。Facebookのユーザー数は7億5千万人。日本では375万人程度と言われているが、今年1月から驚異的なスピードでユーザー数が伸びており、その存在感を増してきている。
また、Fortune100(米Fortune誌選出の世界トップ100位の企業)のうち、77%の企業がTwitterをマーケティングツールとして有効活用していると答えており、1社あたり平均6アカウントを運用しているという。全世界の総Twitterユーザーに占める日本人の割合は25%にも上り、世界第2位。人々の生活に定着し始め、タイムリー性を活かしてイベントや告知など企業のマーケティング活動でも幅広く活用されている。
この状況を活かし「テキストだけでなく、さらに動画で視覚的に訴えることができれば、その効果は格段に上がる」と川延氏は主張する。下のグラフは、動画トラフィックの月次成長率を比較したもの。検索エンジンも伸びてはいるが、ソーシャルメディアの成長率には及ばないことが分かるだろう。
また、eMarketerが米ECサイトのオーナーに対して行ったアンケートでは、次に導入したい機能の1位がソーシャルメディア、2位が動画という結果が出た。ECサイトで動画配信を行っているサイトを指す「EC + ビデオ(動画) = ビデオコマース」という新たな言葉まで生まれている。
ECサイトにおける動画活用事例
では、どうやって動画を活用していけばよいのだろう。その例として川延氏が紹介したのが、1885年創業のイギリスの大手老舗小売店「Marks&Spencer」の事例だ。同サイトでは、洋服、家具、花、食料品、ワインなどのカテゴリごとに動画コンテンツが用意されている。特徴的なのは動画が進むペースに沿って、紹介されている商品が横に表示されるプレイヤーが用意されている点だ。もちろん、その場からすぐに購入することが可能となっている。
Facebookとも連携しており、動画がシェアされた場合、Facebook内でも同等の機能を提供する。それを見た友達が動画を見て視聴者が増えるだけでなく、Facebook上で動画を視聴しながら、ECサイトの商品ページへ誘導できる仕組みだ。
同社では、動画マーケティングの開始によって、1回あたりの購入量123%、売上30%上昇、ワイン売上90%上昇、滞在時間200%、閲覧回数3倍、ユニークビジター倍増という、目覚ましい成果を挙げているという。
セッション内では、その他にも国内外の動画を活用したECサイトの事例をいくつか紹介。「マルチデバイスとソーシャルメディアの親和性は多く語られているが、そこに動画が加わることで、マーケティング効果が最大化できる。トライアルでもいいのでブライトコーブのVideo Cloudを使ってみて、ぜひその効果を自信で確かめていただきたい」と語り、川延氏は講演を締めくくった。