グーグルは7月28日、同社のアドエクスチェンジチェンジサービス「DoubleClick Ad Exchange」の国内展開を開始すると発表した。
DoubleClick Ad Exchangeは、広告主や広告代理店(バイヤー)と、サイト運営者やアドネットワーク(セラー)が、ディスプレイ広告の配信枠をインプレッション単価で売買できるプラットフォームサービス。売買はリアルタイムで入札されるオークション形式で行われる。バイヤー側は複数のサイトにまたがって最適なユーザー・タイミングで広告を配信でき、セラー側にとっては余っている広告在庫の販売機会を拡大できるといったメリットがあるという。
リアルタイム入札の仕組みとしては、セラー側の媒体にインプレッションが発生した瞬間に、DoubleClick Ad Exchangeに対して必要とするバイヤーがいないか問合せが発生し、入札受付を開始。最も高い入札額をつけたバイヤーの広告が配信されるという仕組みだ。グーグルによれば、これらのプロセスはわずか50ミリ秒以内で実施されるという。
利用に際してバイヤー側は、どういったインプレッションに対して広告を配信したいのかを指定してキャンペーンを設定する。地域や媒体のジャンルといったターゲティング、掲載基準、配信する広告クリエイティブ、最高入札価格などが設定内容となる。オープンなAPIも提供されるため、バイヤー自身やサードパーティの持つデータ・技術を利用した、ターゲティングや売買も可能だ。バイヤーにとっての利用メリットとして、同社は次の5つを挙げる。
- 市場原理が働くため、適正価格の把握と取引が可能。
- 媒体1社1社と調整が必要だった従来の取引と比べ、幅広いメディアの購入が可能。
- オーディエンスデータの活用。
- 必要な在庫を1インプレッションずつ購入可能。効果がなれば、すぐやめることもできる。
- どのサイトに配信されても、グーグルから一括で請求されるため、業務フローが改善される。
サービスの背景として、同社アジア太平洋地域プラットフォーム部門ディレクターのスチュアート・スピテリ氏は、広告支出のうちアドテクノロジーやメディアレップ等の周縁産業に60%が流れて行ってしまっているという効率の悪さ、様々な媒体・フォーマット・デバイスが存在し、最適なユーザーに最適なタイミングでメッセージを配信することが難しくなっているという複雑な状況、効果測定の困難さなどを挙げる。
こうした課題に対して、DoubleClick Ad Exchangeはオープンな技術を用い、何千何万という広告主とWebサイトのやり取りをとりまとめることで単純化し、標準化された一定指標による効果測定を可能して、ディスプレイ広告市場の一層の活性化を目指すと言う。同氏は「バイヤー側にはより良いROIを、セラー側には収益機会の拡大を提供する」と語る。実際にROIが向上した例も出てきているという。
「ある航空会社が従来型のメディアバイイングと、DoubleClick Ad Exchangeによるバイイングを比較実験したことがある。DoubleClick Ad Exchangeの方では、データプロバイダーから購入したデータをターゲティングに利用した。CPM(インプレッション単価)で言えば、通常のメディアバイイングが1.37ドルだったのに対して、データ購入用のコストがかかったためAdExchangeを使ったときの方が3倍の3.88ドルとコスト的には高くなった。
しかし、1つのブッキングにかかったコストが260ドルから154ドルに下がったため、メディアへの支払いが高くなったが、効果的なブッキングだったと言える。さらに、ブッキングあたりの収益が548ドルから747ドルに向上した。つまり、ターゲットを絞った分、広告の価値が上がったということだ。これが、DoubleClick Ad Exchangeがダイナミックであるという点だ。タイミングよく、適切なメッセージをターゲットを絞った人に送ることができるというのが、AdExchangeの力だと思う」
海外では既に各種アドエクスチェンジサービスが活発化しているが、2009年に米国で初めて提供を開始した同サービスは、その中でも世界最大のオンライン広告の取引所となっており、全世界で300%の成長率を見せているという。
「他の地域の例では、DoubleClick Ad Exchangeの展開後、1年間で市場が劇的に変わってきている。例えばオーストラリアでは1年前、媒体社は在庫を提供することに関心がなかったが、今では収益の可能性を理解している。代理店からの媒体社に対する利用促進が、大きな変化をもたらした。リアルタイムのオークションに対して、安心して受け入れられるようになっている。
日本においても、媒体社や代理店各社とこの半年から1年かけて話をしてきたが、非常にポジティブな反応をもらっている。日本でのローンチに際しては、いくつかの大手代理店や最上位のブランド力を持つ媒体に参加をしてもらえると考えている」
同サービスは、リアルタイム入札という特性上、運用が可能な広告主などは限られる。そのため、大規模な広告主や大手代理店に対して、グーグルの営業部門が順次紹介を行っているという。既にバイヤー側は多数の国内代理店や広告ネットワークが、セラー側には新聞社やポータル企業、Eコマースサイトなどからの申込が入っており、8月には売買が開始される予定となっている。
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