サイト開設に必須となる「ICPライセンス」の概要
極端な話ですが、日本ではアダルトであろうが、政治批判を含むコンテンツであろうが、どのようなインターネットサイトを運営するかは個人・法人問わず運営者の任意ですが、中国の場合、国内でインターネットサイトを公開するのは許可制になっています。
これは「ICP(Internet Content Provider)ライセンス」と呼ばれており、中国政府が情報統制を目的として、2005年2月から実施している中国語サイトに対する許可制度のようなものです。法人・個人問わずにこの制度は適用されており、このICP登録が行われていないと基本的にはサイトを公開することすらできません。
ICPを取得するには中国政府へ届け出る、もしくは認可を得る必要性があります。インターネットサイト運営者は政府へインターネットサイトのサイト内容と企業情報、サイト責任者の氏名および身分を証明できる物を提出して、初めてICP番号が発行されます。そして、発行されたICP番号をサイト内(一般的にはサイト下部周辺)に表示することで、インターネットサイトを中国で正式に運営することができるようになります。
ICP番号を取得せずに中国でインターネットサイトを公開すると、違法となります。当社の調べた限りでは、一定額の罰金および運営サイトの停止。そして、サーバーの没収、または中国のホスティング企業との取引ができなくなります。すなわち、中国国内でのインターネットサイトの開設が不可能になる恐れがあるということです。
また、中国国外にサーバーを置いて運営しているインターネットサイトの場合、上記のような中国政府による強権発動はできませんが、中国政府のブラックリストに入るや否や、国内からはアクセスができなくなります。FacebookやTwitterが中国で利用できないのは、まさにこの理由からです。

このICPライセンスには、「非経営性」と「経営性」の2種類が存在します。それぞれの特徴をまとめてみました。
非経営性ICPライセンス
企業サイトや特定情報サイトなど、サイト内で金銭的な取引がない非営利サイトに対して必要になります。非経営性ICPサイトの場合、サイト内のライセンス記述部分に「备」の文字が付きます。

取得に際しては、主に次のようなものが必要となります。
- サーバーIPアドレス
- 運営者情報
- 運営者身分証明書
- サーバー管理会社情報
- サイトドメイン
- インターネットサイト、など
気をつけたいのが、最後に記載した「インターネットサイト」です。なぜなら、ICP申請のためには実際に運営するインターネットサイトが既に完成している必要があるためです。すなわち、実際のインターネットサイトの内容が問題ないと判断されて、初めてICP番号が発行されることになります。なお、当社の関わったインターネットサイトの場合、約2週間程度で発行されました。
経営性ICPライセンス
Eコマースやオンラインゲームなど、サイト内で営利が発生するサイトに対して必要になります。最近のモデルであれば、例えばグルーポン型のフラッシュマーケティングサイトなども経営性ICPが必要になります。

提出物は、基本的に非経営性と大きな違いはありません。しかし、外資系企業は、特定地域に営業展開する場合で最低資本金が100万元(約1,300万円)あることが条件となっています。また、複数の省や自治区をまたいだり、全国に対してインターネットサイトを営利目的で運営する場合には、最低資本金の条件が一気に跳ね上がり、1,000万元(約1億3,000万円)となります。
Eコマースやオンラインゲームは本来地域を限定しない事業モデルです。それを鑑みると、地域限定で行うのは非常にもったいないことです。人口13億人のスケールメリットを享受する場合、やはりここは何としても全国展開で考えたいところです。
ただし、過去外資系企業が単独で経営性ICPを取得した例は、当社の知る限り、未だにありません。そのため、日本を含む外資系企業の参入方法として、現状ではオンライン販売業務を行っている中国企業との協業になるケースが多いようです。
当社が運営する「日遊酷棒」は、訪日中国人観光客が日本で使えるクーポンの権利を購入するサイトであり、定義としてはECサイトになるのですが、経営性ICPを持つ中国企業との協業によって事業開始にこぎつけています。
正攻法は難しい、どうやって折り合いをつけるかが鍵
このように、中国向けにインターネットビジネスを行う場合、アクセスやICPなど超えなければいけない多くのハードルが存在します。それらの課題に真正面から向き合っても、残念ながら100%満足のいく解決策を見つけることは、今の中国の状況では“ほぼ無理”と言って間違いないでしょう。しかし、うまく折り合いをつけていけば事業を行うことは十分可能です。
次回は、今回挙げた課題を踏まえて、どのようにすれば解決可能なのか、具体的な事例とともに紹介していきたいと思います。