量より“質”を分析する「コミュニケーションエクスプローラー」
ソーシャルメディアの普及で、企業のマーケティングも大きく様がわりしている。口コミによる効果が高まり、その伝播力は無視できる存在ではなくなった。
しかし、企業側に生活者の声を聴くという「傾聴」のニーズが高まってはいても、ソーシャルメディア上の膨大な生活者の声を正確に把握するのは難しい。コメントの数が多い上、日本語は曖昧で複雑であり、口語となればいっそう本意を理解するのは難しくなる。そのため、これまではキーワードの数や種類をもとにした「どれだけ話題になったか」が、唯一の評価軸だったといっても過言ではない。
また、場合によっては「話題にはなったがネガティブな扱い」である可能性もあり、話題になった理由や要素についての分析も難しい。もし生活者の正確な反応を読み解こうとすれば、フリーコメントを1つひとつ読み込む他なく、莫大な量に対するサンプル数の少なさや、主観が入る余地の大きさを鑑みると、決して客観的な分析とはいい難い。ざっくり量の分析か、一部分を人が読むか。極端に言えば二者択一だったわけである。
そんなジレンマをスキッと払拭してくれるツールが、インターネット広告会社サイバー・コミュニケーションズが提供する、ソーシャルメディアリスニングサービス「コミュニケーションエクスプローラー」だ。
コミュニケーションエクスプローラーには、大学機関と共同で研究開発した辞書・知識に基づく「自然言語意味理解エンジン」が搭載されており、同音異義語の多い日本語でも正しく意味を理解できる。それによって、大量のコメントの中から効率的に「生活者の気持ち」を抽出できるというわけだ。
たとえば、商品の名前とともに使われる「高い」という言葉。もし「品質は~に続けばポジティブな評価だが、「価格が~」に続けばネガティブになる。これは 単純な例だが「自然言語意味理解エンジン」は助詞なども含めて意味を理解し、細やかな「感情」を分析・抽出することが可能だ。これを「肯定」「否定」などの3段階48種類の感情として分類し、定量化していく。その分類の正解率は75~95%にもなるという。もちろん、それぞれ分類された投稿コメントの該当箇所にまで遡って閲覧できるので、「意味のあるコメント」の抽出も容易だ。
その秘密について、同社コミュニケーションテクノロジー本部の野々村和典氏は「独自の辞書・知識にある」と明かす。「改訂をこまめに行っており、ネットで一般的になっている若者言葉や略語、顔文字、ギャル文字などにも、定期的に対応しています」
その正確性、網羅性は高く、たとえば「やばい」という若者言葉についても、文脈からかなりの正解率で判断できるという。
従来型ツール | コミュニケーションエクスプローラー | |
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分析 |
統計型の分析 キーワードの出現頻度に着目 |
定性型の分析 ユーザーがどう思っているか、感性や話題に着目 |
感性 | ほとんどが、ポジティブ・ネガティブ・ニュートラルの3種類程度 | 肯定・否定・質問・要望など3段階48種類 |
正解率 | 50%前後 | 75%~95% |
例1「見やすくしてほしい」 | 「見やすい」という単語で評価するため、「ポジティブ」と誤った判定となる | 「(◯◯を)見やすくしてほしい」と文脈で理解して、「要望」と正しく判定する |
例2「品質は高いが、価格も高い」 | 「高い」という単語のみで、「ポジティブ」と決めるか、あるいは判定ができない | 「品質+高い」=「肯定」 、「価格+高い」=「否定」 と、単語を組み合わせて分析する |
また、こうした分析結果を、時系列や競合他社で比較する機能も興味深い。1年前のキャンペーンと比較したり、他社の競合製品と比較することで、生活者の持つイメージや評価が際立ち、より明確に把握できると考えられる。