運営形態
これもいくつかのパターンがありますが、大きく次の3つに分類できます。
- 中国の提携企業を表面上の運営者として、実際的には日本企業が運営
- 中国企業にほぼ全てを委託して運営
- EC支援会社に依頼
1.中国の提携企業を表面上の運営者として、実際的には日本企業が運営
中国企業には、あくまで中国国内で法的に問題ない形でECビジネスをさせてもらう体制をサポートもらい、それ以外の運営自体は基本的にすべて日本企業が行う形態です。すなわち、カスタマーサポートや商品発送などを、全て日本側が行うというものです。
カスタマーサポートに関しては、コールセンターを用意することがベストな状態だと思います。しかし、まずはチャットによるサポートだけでもスタートできるでしょう。チャットであれば、中国との時差はわずか1時間なので、社内に中国語ができるスタッフがいれば対応可能です。
商品発送に関しては、日本からの場合、関税や中国の消費者の手元に商品が到着するまでに時間がかかることから、中国現地から行いたいところです。数千円もの送料がかかる日本からの郵送を許容できる中国人消費者は、まだまだ少ないのが現実でしょう。
なお、中国国内の物流に関しては以前よりも、「商品が届かない」などの状況が少なくなってきているようです。
2.中国企業にほぼ全てを委託して運営
日本の企業側から、商品や商品詳細情報などは提供しますが、現地でのプロモーションやカスタマーサポートなどは全て中国企業に依頼する形態です。当然ですが、この場合、中国企業が「経営性ICPライセンス」を持っていることが前提となります。
気をつけたい点としては、基本的に全てお任せになるので、よほどパートナー企業にやる気がなければ、うまく行かないことでしょう。そして、自社でのノウハウ蓄積がなかなか進まないこともデメリットの1つです。
3.EC支援会社に依頼
最後は、中国向けEC展開の支援会社へ依頼する形態です。
販売代行のみを行うところから、カスタマーサポートや物流サポートなどのフルサポートが可能なところまで様々です。最近では、この分野での支援を行う企業がずい分と増えてきていますので、各社のサービス内容を十分に比較検討したうえで、選ぶことができます。
その他
上記のどれにも当てはまらないものに、中国も対象にした海外向けECのASPサービスなども最近では存在します。翻訳や発送のサポートが付いているところもあるので、最小のコストやトライアルで始めてみたいという企業にとっては、最もミニマムな方法でのチャレンジと言えるでしょう。
中国ECの最新状況
ここに来て中国のECは新たな局面に入っています。それは「淘宝商城のオープンプラットフォーム化」です。
以前紹介した、中国版UNIQLOの異名をもつ「凡客誠品(VANCL.com)」や、前述の「紅孩子(redbaby.com.cn)」などを含む約40の有力中国EC企業が、淘宝商城とパートナーシップを結び、淘宝商城内で商品を展開できるようになりました。
これにより、淘宝商城はECのプラットフォームプロバイダーへと変貌しつつあり、中国のB2C市場は、淘宝商城を中心に他EC業者も飲み込みながら巨大なコングロマリットへと変化しています。
このニュースの直後、インスタントメッセンジャーサービス最大手「QQ」を運営する「Tencent(騰訊)」が、「QQ網購(buy.qq.com)」という、B2Cプラットフォームを開始するとアナウンスしました。淘宝商城と同様に、Tencentも今後有力な提携企業を増やしていくことが予想されており、どこまで有力なパートナーを取り込めるかが注目されています。QQは、アクティブ利用者数が5億人とも言われており、この膨大な利用者数を目当てに、有力なEC業者がTencentとの提携を求めてくることは容易に想像できます。Tencentの膨大な利用者が提携サイトにもたらすトラフィックや販売数を考えると、淘宝商城も落ち着いてはいられないではないでしょうか。

さらに最近では、オープンプラットフォーム化の流れを加速させるように、中国版Twitter型サービスWeiboの最大手「新浪」も、Weibo上での決済機能を搭載し始めており、EC市場への参入が秒読みと言われています。
まとめ
前回・今回と2回に渡り、中国向けのWebサイトを開設する上での問題点と、その解決策を紹介しました。参入するまでの障壁だけでなく、参入後にも日本以上のレッドオーシャンが広がる様を、理解頂けたかと思います。
しかしながら、ここ最近の、淘宝商城を初めとした中国大手ネット企業のオープンプラットフォーム化は、今までのルールが変わる予兆のようにも思います。iモードからスマートフォンアプリへのシフト時のように、マーケットニーズをいち早く嗅ぎ付けた新興企業の参入余地が、今の中国ECにはあるかもしれません。
2012年、中国EC市場の潮流を見るカギは、大手ECのオープンプラットフォーム化の流れにあるでしょう。この流れを注意深く読み解き、参入した企業にこそ、新たな成功を得ることができるかもしれません。その権利は、もちろん日系企業にもあると思ってよいでしょう。