ネット全盛期のいま、なぜ「じゃらん」は紙を出し続けるのか
紙からWebへ「検索」の役割が移行しつつある今、業界を見渡してみれば、廃刊へと至った情報誌も少なくはない。しかしながら、旅行情報誌「じゃらん」は、ネットへの移行が著しいジャンルであるにも関わらず、今も堅実にビジネスを継続、2012年1月で創刊22周年を迎える。
「じゃらん」ブランドで発行されている情報誌は現在、北海道、関東&東北、東海、関西中国四国、九州の5誌。誌面の大半を締める広告が収入の柱の1つであり、同時にそれは読者にとって有益な情報である。とはいえ、情報量という点では、「じゃらんnet」には及ばない。それでも、「じゃらん」の購読者は絶えず、中には固定客も多いという。この状況を、「じゃらん」のマーケティングを担当する、同社の青木里美氏はこう分析する。
「九州では、購読者の40%が固定ファンだったという号があるほど、たくさんの方々が毎月『じゃらん』を楽しみにしてくださっています。読者層は、近年の関東版の調査では、女性が65.8%、平均年齢36歳、子どもを持つ方が3割を越えていました。さらに『旅行が趣味』という年配の方も多いようですね。一方、ビジネスユーザーはほとんどいません」
こう聞くと、ネットリテラシーの低い層が紙媒体を選択していると判断しがちだが、それほど単純な図式を描けるわけではないという。
「『予約』だけなら、かなりの割合で『じゃらんnet』や他の旅行サイトなどに流れているのは明らかです。PCサイトはもちろん、携帯電話やスマートフォンからの予約は年々増えています。しかしながら、『じゃらんnet』を利用することにより、『じゃらん』読者でなくなるかというと、必ずしもそうとは限りません。たとえば、『どこかへ行きたい』『何かしたい』と漠然と考えて検討するステップにおいては、紙媒体の方が効果的です。そんな理由から、いまも多くの方々が『じゃらん』を選んでくださっているのだと思います」
青木氏は読者カードでの調査結果を踏まえて、「じゃらん」を読んだ人の3割が実際に宿に予約をしており、9割が「どこかに行きたいと感じた」と答えていると説明する。さらにコンビニなどで何気なく手に取り、何気なく見た記事で旅心を喚起され、旅館に予約を取る。そんな人たちも少なくないという。
「アクション率の高さは、『じゃらん』が創刊当時から掲げている目標の1つです。表紙に『ニッポンを楽しむ!旬のお出かけ 得するマガジン』とあるように、読者に旅に出て、いろんな経験をしてほしい、楽しんでほしいという思いは、今も変わりがありません。ですから、旅心を喚起するために、地域やイベントなどの魅力を紹介する編集ページにも力を入れてきました」(次ページへ続く)