リクルートのネットマーケティング、ホットトピックスは「Hadoop解析」
リクルートといえば、さまざまな分野の雑誌やネットメディアを扱い、情報と生活者をつなぐ国内最大の媒介者である。広告主から集めた大量の情報を、最適なメディアに乗せて届ける――。そのシンプルな事業体制から、とかく営業力とメディアパワーの会社と見られがちだ。
しかし裏側では、国内トップレベルのITインフラが事業を支えている。特に、昨今のネットマーケティングに欠かせない先端技術「Hadoop」の活用においては、名だたるIT企業からも一目置かれる存在だ。連載3回目となる本記事では、リクルートのネットマーケティングを支えるエンジニアリングに迫った。
リクルートの技術部門は、以前まで事業部ごと別々に存在していた。たとえば、住宅カンパニーや自動車カンパニーなど、各カンパニーごとに技術部門を抱え、それぞれシステム構築などの業務を担当してきた。しかし、これでは効率が悪かった。コストがかかるだけでなく、エンジニアチームが分断されているために、ノウハウの蓄積が妨げられ、スキル向上の障害となっていたのだ。
そこで生まれたのが「システム基盤推進室」という組織だ。各グループに分散していたインフラ部隊をまとめ、全社横断的なインフラ構築を行い、共通のフレームワークを作った。これを立ち上げ、率いるのはリクルート MIT Unitedでエクゼクティブマネジャーを務める米谷修氏である。システム基盤推進室は、新しい技術を探索、検討し、ビジネスに落としこむという機能も持つ。約3年前にHadoopなどの新技術をリサーチし、リクルート社内に持ち込んだのも、この米谷氏だ。
リクルートIT部門のエグゼクティブマネジャーが語る、Hadoopの魅力とは
顧客データや商材データ、行動履歴のログなどを活用するにあたって、Hadoopはすでになくてはならない技術になっている。
「ここ数年、マーケティングにおいて扱うデータ量は急激に増えてきている」と米谷氏は語る。たとえば、同社のあるカンパニーのメディアは、月間約700万人のユーザーがおり、行動履歴のログは年間で10テラバイトにものぼる。「これを処理するのに従来はオラクルなどのRDBを使っていたのですが、とても処理が間に合わない状態でした」(米谷氏)。
ネットメディアを提供する企業として、今後もビジネスを続けていくには、増え続けるデータを処理するための技術がどうしても必要になってくる。以前は、あるサービスにおいて、週に1回、あるいは月に1回にしか広告主にレポートを提出できないという状況だった。それがHadoopを活用することで、オンラインの管理画面から毎日レポートを確認してもらえるようになったという。サービスレベルが圧倒的に向上したのだ。
Hadoopの活用の場はさまざまだ。たとえばネット広告の出稿なら、もっとも効果が上がり、費用を削減できる、時期、媒体、組み合わせなどを探るために。自社サービスなら、ユーザーがよりアクションを起こしやすいレコメンド機能のロジックを算出するために。メールマーケティングなら、複雑な仕組みのメールを大量に送信するために。それまで実施を諦めていた施策が、Hadoopの導入によって実現する。そういった事例は、社内だけでもたくさんあると米谷氏は話す。