媒体単体でなく、アトリビューション的考えで事業を推進
「日本の旅行ニーズを喚起し続けたい。そのためには、たとえ利益が出なくとも、『赤字になるまでは』出し続けるでしょうね」
そう語る青木氏の言葉は、業界をリードする同社員ならではの使命感に満ちている。
リクルートの調査によると、2009年までは『不況知らず』といわれたほど、旅行者は緩やかに増加していた。ところが、2010年、2011年と2年連続して減少。さらに、マーケットの特徴として50歳以上のシニア層が50%を占めていることを鑑みると、少子化もあいまって、年月の経過とともに旅行業界は縮小する可能性がある。つまり、いかにヤング層、ミドル層を旅行に誘うかが、業界としての至上命題になってくる。
「ネットで予約する人たちは、すでに旅行準備を進めている段階です。行き先もどんな宿に泊まるかも、だいたい決まっています。そうした人たちを、いかに囲い込むかが『じゃらんnet』を含めたネットの集客戦略。しかし、目の前の顕在化したニーズを刈り取るだけでは、先細っていくことは明白です。だからこそ、情報誌『じゃらん』が書店やコンビニの店頭などの人々の目につくところで『旅行って楽しいよ』と、喚起し続けていかなければならないと思っているんです」
もはや、単体で利益を追求するのではなく、すべての媒体を総合した『じゃらんランド』でアトリビューションの流れを作っていくという姿勢なのだ。
「たとえば、ある有名な旅館では『じゃらん』への広告出稿を辞めた途端、『じゃらんnet』で名指しで検索されることが激減したそうです。すでに、『じゃらんnet』のランキング上位に入っているので、集客には困らない。でも、旅館の良さを知り、指名で来てくださるお客様を増やしたい。そういったお考えで、『じゃらん』への広告出稿を継続されたということがありました」
個々の媒体の価値を高めながら、「じゃらん」ブランドとしての効果測定を行ない、事業を通じて日本の旅行業界の活性化を目指す。そして、その先には「日本が元気になること」も意識しているという。
「旅は心身のリフレッシュだけでなく、見過ごしていた価値に気づいたり、仲間と協力してトラブルを乗り切ったり、人を元気にする効果がありますよね。『じゃらん』は22年という歴史の中で、業界内でも大きな影響力を持つようになりました。だからこそ、業界を活性化することで日本を元気にしていくという意識を持って仕事に取り組まなければならないと思っています」