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2年目の美咲、新たな困難に挑戦!『ソーシャルメディアマーケター 美咲2年目』発売特別企画 ─ 第5回

 14時をまわり、3時間目のゴングが鳴った。いよいよ、経営会議に向けて最終の準備段階に入った。広報室の丸山室長は、15時からの経営会議で今回の一件に関する対応策につ いて、議題に上げたい旨を正式に広報室担当取締役に報告し、了承を得た。

 経営会議までに整理すべきは、現状の報告書と発表する公式謝罪文のドラフトだ。大切なのは社内決裁用の資料作成ではなく、対外的に発表する謝罪文の具体的内容だ。調査報告書は経営会議出席者に経緯や現状を端的かつ明確に理解してもらうことを優先させ、ネットの書き込みなどについてはクチコミ分析ツールのグラフやコメントを直接見てもらうことにした。炎上対策本部では、公式謝罪文に盛り込む、下記5つの項目について議論がされた。

謝罪文の構成要素

  • お詫び
  • 経緯説明
  • 対応策
  • 再発防止策
  • 本件に関するお問い合わせ先

 まず冒頭で社員が飲酒運転をしたことに謝罪を行い、次に金曜日深夜から今日(月曜日) までの経緯を包み隠さずしっかりと説明する。問題は対応策と再発防止策だった。

 美咲が人事部の方針を阿部に尋ねる。「対応策、つまり問題を起こしてしまった社員・淀川さんの処分についてですが、人事・総務部の見解はどのようなものになりますか?」

 阿部がよどみなく答える。

 「今後、淀川の上長である営業部長とも協議しながら、就業規則などに則り、相応の処分をすることになると思います。ただし、本日時点では処分内容を決定できませんので、謝罪文には『当社規定にもとづき近日中に処分を決定する』旨を記載したいと考えています」

 「わかりました。再発防止策についてはいかがいたしましょうか」

 「今回は新卒社員によるものでしたが、すべての社員に関わることでもありますので、今後全社員を対象として、社会常識やモラル、社会的責任やコンプライアンス、そしてソーシャルメディアの利用について理解を深める研修プログラムを実施しようと考えています。社員数が多いため、集合研修ではなくeラーニングで実施することになると思います」

 「では、こちらについても、謝罪文の中には『今後、全社員に対して社員の社会常識やモラル、社会的責任やコンプライアンスに対する理解を深める教育研修プログラムを実施する』旨を記載するようにいたしましょう」

 美咲は手早く要点をまとめて、拓也にメモを渡した。謝罪文のドラフトは拓也が作成し、その後、丸山広報室長、勅使河原広告宣伝部長、久保田お客様相談室長、阿部人事・総務部長、難波法務部長、と会議に出席していた全員のチェックを受けて完成した。

 時計の針は14時40分を指している。経営会議まで20分! 残すは、謝罪文の公開場所と告知方法を決めなきゃ。さあ、カウントダウンが始まったわ。美咲は気合いを入れて先を急ぐ。

 「謝罪文の公開場所は、日本ビバレッジ公式サイトの『ニュース<ニュースリリース』でよろしいでしょうか」

 公式サイトを管轄する丸山広報室長が答える。

 「それで良いと思います。公式サイトのニュースリリースへの掲載と同時に、メディア各社への投げ込みも行います」

 美咲が慌てて言い添える。

 「すみません、そういえばまだ確認していなかったのですが、御社サイトのニュースリリースはPDFではなく、HTMLで作成されていらっしゃいますか?様々な携帯端末からのアクセスを考えるとPDFではない方が良いのですが」

 ツイッターやフェイスブックはパソコンではなく携帯端末から利用している人も多い。 その場合、謝罪文へのリンク付きの投稿をしても、飛び先がPDFだとファイルが開かないことがある。仮にブラウザーにプラグインを入れていたとしてもダウンロードや表示に時間がかかり不親切なのだ。そのため、近年では大半の企業がHTMLページでニュースリリースを掲載するようになっている。

 丸山は自信をもって答えた。

 「はい。弊社も数年前からニュースリリースはHTMLで掲載するようにしていますので、大丈夫です」

 「そうですか。大変失礼いたしました。では、現在公式サイトの運用を委託している制作会社に連絡をして、完成した謝罪文のドラフトを至急テストサーバーにアップする準備を進めてもらってもよろしいですか」

 ぎょっとした顔で丸山が語気を強めて言う。

 「え?まだ経営会議の最終承認はおりていませんよ!」

 予想した反応に、今度は美咲が自信をもって答える。「はい。確かにおっしゃるとおりですが、仮に15時からの経営会議で協議し、16時に『謝罪文を公開する』ことが決議された場合、それから制作会社にページ作成の依頼をすると、どんなに急いでも本番環境への公開が17時くらいになってしまうと思います。もしかしたら担当の方が外出してしまうかもしれません。いまのうちに連絡して、担当者、デザイナー、コーダーには待機してもらった方が安心です。経営会議が終わる16時の段階でドラフトの謝罪ページがテストサーバーにアップされていれば、あとは会議で微調整が入っても、10分から20分のタイムラグで修正・本番公開までこぎつけられます。

 その時間であれば、本日中にニュースサイトで謝罪した事実を取り上げらもらえるかもしれません。制作会社さんには細心の注意をはらって、事前にページ作成を進めてもらってください」

 「なるほど、承知しました」

 丸山は満足そうに力強く頷いた。

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MarkeZine(マーケジン)
2012/03/26 12:00 https://markezine.jp/article/detail/15333

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