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2年目の美咲、新たな困難に挑戦!『ソーシャルメディアマーケター 美咲2年目』発売特別企画 ─ 第5回

 いよいよ経営会議が始まった。

 丸山広報室長が一連の経緯と今後の対応について説明することになった。美咲と拓也は、役員からより専門的な質問が出された場合に備え、経営会議が執り行われる隣の応接室で待機するよう命じられた。

 「美咲さん、どんな判断がされるでしょうかね……」

 「うん。緊張するわね。でも日本ビバレッジさんのことだから、きっと聡明な判断をしてくださるわよ」

 2人は言葉を交わしながらも、お互いパソコンを覗き込んでいた。引き続き、掲示板での会話や、ツイートをモニタリングしていたのだ。午後に出たヤフートピックスのニュースは、予想通りとんでもない拡散力を発揮しており、日本ビバレッジに関するツイート数は平常時の50倍までに跳ね上がっていた。いまはトピックスからは落ちているものの、ものすごいスピードでRT(リツイート)されている。

 時計の針が15時半を回ろうとした頃、丸山広報室長が飛び込んできた。

 「謝罪文の公開が決議されました!」

 待っていましたとばかりに、拓也が制作会社に確認をすると、すでに謝罪ページはテストサーバー上にアップされていた。経営会議で指摘された箇所の微調整を行い、謝罪文は16時ちょうどに本番公開された。

 公式謝罪文は瞬く間にネット上を駆け巡った。謝罪は、公式サイトだけでなく、ツイッター公式アカウントとフェイスブックページでも告知され、多くのRTやシェアがされた。

 最も影響が大きかったのは、謝罪文公開から1時間が経った ニュースサイトの記事だ。記事のタイトルにはこう記されていた。

 日本ビバレッジが社員の「飲酒運転騒動」で謝罪/社員の関与を認め再発防止に努める

 この記事は「あっという間」に数百回のツイートやRTがされ、ツイッターで拡散された。引き続きツイートのモニタリングをしていた美咲たちが驚いたのは、ニュースサイトのURLとともに付記されている一言コメントだ。その多くが、次のようにおおむね好意的なものだった。

  • この社員がやったことは明らかに良くないことだが、すぐに正式に謝罪したことは評価する
  • 日本ビバレッジほどの企業規模でこの意思決定の早さはすばらしい
  • まぁやっちゃったもんは仕方ないよな。今後ちゃんと指導を徹底してほしい
  • 次やったら許さない
  • 謝罪早すぎてワロタw
  • 自ら示した再発防止策、きっちり守って実行して欲しい。これからも応援しています

 もちろん、辛らつなコメントや誹謗中傷は続いたが、謝罪文の公開によって「潮目」が変わったことは明らかだった。

 週末、批判の嵐が巻き起こっていた掲示板でも、公式の謝罪文公開を受け、任務完了の『勝利宣言』が行われていた。依然として批判的なツイートは多いが、美咲と拓也は炎上のスピードが加速度的に増していき、すべてを燃やし尽くしてしまう『最悪の事態』を回避したことを感じていた。

 その後、22時まで2人は日本ビバレッジの会議室でツイッターをモニタリングし、新たに大きな火種が生じていないことを確認して、失礼することにした。

 帰り道、拓也が笑顔で「まだ問題は解決していないけれど、『まずは一段落』と言ってもいいかもしれないね」と言った。さすがにその顔には疲れが見え隠れする。

 「うん。そうだね。一時はどうなるかと思ったけれど、何とか最悪の状態からは脱した気がするわ…。拓也くん、本当にお疲れ様でした」

 「いやいや、それはこっちのセリフだよ。僕が言うのもなんだけど、今日の美咲さん、ちょっと神がかってたよ。次々と明確に対策の方向性を出していたし、一瞬ヒヤッとした難波法務部長とのやり取りにもすごく冷静に対峙していたよね。いやはや、本当にお疲れ様でした……」

 拓也がそう言うと美咲は照れた様子で、でもすごくうれしそうに続けた。

 「そんなことないよ。私もずっとパニック状態だったし、自分が話していることや提案していることがすべて正しいなんて自信もなかったから、いまでも本当にこれで良かったのかなって思ってる。でも、私たちには、私たちにできることしかできないのよね。そういう意味では、最善を尽くせたと思う」

 「今日はコトがコトだから、このまま『げんてん』で『カンパァ~イ☆』なんて気分じゃないところが残念だね」

 「本当ね。まだ予断を許せる状況じゃないから、今夜と明日の朝も、引き続き日本ビバレッジ関連のツイートや掲示板の動向をウォッチしていきましょう」

 へとへとになりながらも、お互いの健闘をたたえて、2人は渋谷駅で別れた。翌週、今回問題を起こした社員・淀川が会社を去ることになることをいまの2人は知る由もなかった。

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MarkeZine(マーケジン)
2012/03/26 12:00 https://markezine.jp/article/detail/15333

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