ニーズがあってもできなかった、クロスメディア調査にグーグルが挑む
「SSP(シングル・ソース・パネル) Initiative」は、テレビ、PC、モバイルなど、クロスメディアの広告効果検証を行うプロジェクトだ。シングル・ソースとは、消費者1人ひとりのメディア接触行動と購買行動を、同一個人のレベルでトラッキングし、クロスメディア環境の中で各広告が消費者に与える行動インパクトを、各メディア共通のメトリクスで「計測」し「可視化」していくもの。
「これまでの広告効果は、『テレビでは』『オンラインでは』と、メディア主体で語られてきました。今回のSSP Initiativeは、『その人がどう見たか』という人主体で検証しようというものです」
そう語るのは、グーグルジャパンでSSP Initiativeプロジェクトのリーダーを務める小林氏。広告業界でリサーチ等のキャリアを積んだバックグラウンドを持つ。
「シングル・ソースはグーグルが世界ではじめて行ったものではありません。古くからニーズも取り組みもありましたが、さまざまな条件から持続的に実行できなかった。グーグルにおいても、かなりチャレンジングな取り組みです」(小林氏)
グーグルの日本での本格的な始動は2011年からだが、ヨーロッパでは先行して進められていた。とくにドイツでは調査環境が整っていたこともあり、すでに有意義な結果が出ているという。
「クロスメディアの広告効果検証は、世界各国共通の課題でした。他国のチームと常に情報交換し、お互いに学び合っています」
外部のリサーチ会社と協力し、グーグルユーザー以外のデータを取得
リサーチのプロがグーグルに集い、新たに始まったSSP Initiative。グーグルならば、さぞ豊富なデータがあるだろう……と考えてしまうが、実はこのプロジェクト、グーグル内でも独立したもので、SSP Initiative独自のデータをそれぞれの国で各国の専門会社と協働して取得しているという。
SSP Initiativeは3つのパネルから構成されているが、そのうちの1つ、「Cross-media Efficiency Panel」は1人のユーザーに対し、テレビ、パソコン、モバイルのメーターを導入し、クロスメディアキャンペーンの重複リーチやトータルリーチ、広告接触回数を計測する。「ROI Measurement Panel」は、Cross-media Efficiency Panelの一部のユーザーに対し、小型のスキャナを提供する。購入商品を常にスキャンしてもらうことで、広告接触によるセールスへの影響を分析するのだ。
「もともとこのプロジェクトは、クロスメディアで大規模なキャンペーンを実施している広告主のニーズを受けて進んだものです。広告主は、オンライン・オフラインを分けずに、キャンペーン全体の成果を知りたいと思っている。オンライン広告だけ、グーグルの広告に接触した人だけを見ていてもわからない。総合的にキャンペーン効果を検証する必要があります。
必ずしも広告効果がプラスに働いているという結果が得られるわけではありません。そういう意味で、我々のチームはグーグル内でも中立的な立場でデータを見ているといっていいかもしれません」(巳野聡央氏)
とくにオフラインは、グーグルにとっては未開拓の分野だろう。それに地道に取り組む姿勢からは、SSP Initiativeへの覚悟のほどがうかがえる。