SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

マーケティング・プロフェッショナルズ

「お客様の感情を動かし、世の中に役立つものを作りたい」─ ベネッセコーポレーション 安田啓司氏


サービスを圧倒的に手厚くし、Webと雑誌トータルでの接触シェアを高める

 青葉 ――W&F(Women&Family)事業本部について、詳しくお話を伺えますでしょうか。

 入社してからシステム部門、ウィメンズパークの責任者、全社Webサイトの責任者を経て、2010年より現職の「Women&Family事業本部」で女性向けのWebと雑誌メディアそれにひもづくECサイト群を統括することとなりました。当社の「出産・育児・子育てを応援する事業」を全方位で徹底的に強化しようというのが意図です。

 青葉 ――Webと雑誌を融合し、事業価値向上に取り組んでいらっしゃるということですね。現在のお立場になってから手ごたえを感じたこと、逆に課題に感じていることがあれば教えていただけますか。

 様々なメディアを保有しているので、それらをどう使ったら相乗効果が高まるか、よりお客様に貢献できるかを考えています。現在、ネット市場は伸びていますが雑誌市場は落ち込んでいます。この流れはもう止まることはないと思いますが、その際に企業が何をすべきかというと、「トータルでの接触面積、つまりシェアを高めること」と、「サービス自体を圧倒的に手厚くすること」だと考えています。

株式会社ベネッセコーポレーション W&F(Women&Family)事業本部 メディア事業部 部長 安田啓司氏

 当社でも、以前は雑誌が主体でWebメディアはその補完的な存在でしたが、今は考え方が逆転しています。もうあらゆる情報やサービスがネット上にあるので、雑誌を担当するメンバーは今、「ネットが取りこぼしているものは何だろう」と必死で模索しているのです。

 僕は雑誌が不要だとは決して思いません。やはり、書店で手に取れて、質感がある雑誌だからこそ提供できるブランド価値があり、それはこれからも必要です。雑誌という提案型メディアと、ネットのプル型メディアをいかに融合させて価値を創出するかが、向こう数年の課題です。

 青葉 ――雑誌とWebの融合について、安田さんが特に注目されているのはどのような点ですか?

 雑誌の力とは編集者の編集力を指すと思います。なので、雑誌とWebメディアの融合について注目しているのは、雑誌の編集力をどうWebに取り込むかという点です。

 手前味噌のようですが、当社の編集者は観察力に優れています。例えば主婦向け雑誌「サンキュ!」の編集者は、月に何度もお客様の自宅を訪問し、冷蔵庫から押入れから拝見し、何かちょっと他の家にはないものや不思議な場所にあるものについて伺って、記事にしています。そうやって編集しているから、読者から「おもしろい」「意外だ」と反響があるのです。今お客様が何を求めているかは、もうアンケートで聞いても分かりません。だから観察力が必要なのです。

「人と違うことをしたい」という強い思いが、事業を成功に導く

 青葉 ――では、具体的に雑誌の編集力をWebに活かすために、どのようなことをされているのですか?

 今、各雑誌の編集長・編集者はWebメディアの編集長・編集者へ異動してもらっています。僕が見る限り、いわゆるWebマスターと呼ばれる人は、どうしても数値でのレスポンスに目を奪われがちです。ですから、雑誌の編集者の「お客様のウォンツを探る力、ニーズを満たす力」をWebに取り込むことが突破口になると思っています。

 その上で、それぞれのメディア特性を活かした仕掛けやインテリジェンス性を盛り込んでいきたいですね。情報それ自体は、今やどちらに載っていれば価値が高いというものではないので、自社のお客様を見つめて、どうしたら喜んでもらえるかを踏まえて編集していく視点が大事だと思います。

株式会社サイコス 青葉哲郎氏

 青葉 ――なるほど。システムのご出身なのにデータ志向ではなく、とても有機的にこれからのメディア事業を捉えられている姿勢が印象的なのですが、若い頃からご自分では発想が柔軟な方だったと思われますか?

 とにかく小さい頃から「人と違うことをしたい」とは思っていましたね。遠足で一人、道路の端っこを歩いて先生に怒られたり(笑)。生徒会長をやるような優等生タイプとは正反対で、周りからは変な奴だと思われていたと思います。

 しかし、改めて考えてみると、「人と違うことをしたい」という思考は現在のビジネス、特にWeb業界には必要かもしれません。今はSNSの波及力も手伝って国内外の成功事例があっという間に知れ渡り、3か月もすれば同じようなサイトやサービスが雨後の筍のように出てきますよね。そんなことがもう10年くらい、この業界で繰り返されています。

 得た情報をそのまま取り入れてアウトプットしただけでは、もう世に出る前から負けています。自社のブランドや市場の変化を踏まえて、多分この先に出てくるものよりも、“ひとひねり、ふたひねり”違うものを出さないと、事業として成功することは難しいと思います。

 青葉 ――そう考えたとき、どうひねるか、工夫していくべきかを発想するのも容易ではないと思うのですが、安田さんが若い方に向けてアドバイスするとしたら、その腕を磨くコツはどこにあるのでしょうか。

 僕は部下や若いスタッフに、「何かを始めるときにはその競合を100個見なさい」と言っています。サイトなり、サービスなり、自分が思いついたものと似ているものを100個ほどチェックすると、市場や技術や流行り廃りが肌感覚でつかめてきます。その上で、もう一度自分の案を見つめなおすと足りない部分が分かりますし、デザイナーやパートナー企業の提案も自分の判断で取捨選択していくことができます。

 それから、とにかく仕事の数をこなすことも大事です。僕は今ある当社のWebサイトのほとんどすべてに最前線で関わってきたので、どうすれば成功し、失敗するかが体に染み付いています。「量が質を生む」といわれますが、その通りですよね。

次のページ
自分の仕事がどう社会に役立つのかを考える

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
マーケティング・プロフェッショナルズ連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

青葉 哲郎(アオバ テツオ)

サイコス株式会社 代表取締役
東京都出身。明治大学政治経済学部卒業。1994年4月 ジャスコ (現イオン)入社。1995年マイクロソフト入社。トップセールスを経て、最年少ブランドマネージャに就任。MSN事業開発など担当。2001年インテリジェンス入社。マーケティング部を設立し『はたらくを楽しもう。』で同社を転職ブランド1位に。2008年リクルートエージェント入社。『転職に人間力を。』で新ブランドを立ち上げ、コスト減と広告効果の最適化...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2012/07/13 09:38 https://markezine.jp/article/detail/15865

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング