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話題のサービス「LINE」関係者インタビュー

みんなが大注目「LINE」の裏側を取材~国境や世代を越えて愛されるサービスリリースの秘訣【第1弾企画・開発編】


ユーザーの声を反映した高速PDCAサイクル

 LINEのサービスを支える裏側で一番大変なことをたずねたところ、「やはりスピードに対応すること」と堀屋敷氏は語った。変化や動きの速いインターネット業界の中においても、LINEの開発・アップデートのPDCAサイクルはさらに速いようだ。

 NHN Japanではユーザーの声を重視。マーケティングチームから各部署にTwitterやブログのユーザーの日々の声が送られてくるそうだ。担当者ベースでも、TwitterなどでLINEについて検索をしたり、堀屋敷氏自身もグーグルプレイなどのアプリストアのマーケットレビューをよく見ているそうだ。そしてユーザーの不便だという声をよく聞き、それを決め手に社内で取り組むプロジェクトの優先順位を決めている。もちろん、国内だけでなく、台湾などの海外ユーザーの声にも同様に耳を傾け、日々不具合を探して対応。徹底したソーシャルリスニングが行われている。

 だからこそ、「スピードをはやく、常に出していく。ユーザーのレスポンスを受け取って、また次につなげていく。これがLINEが成長し、成功した理由だと思っている」と堀屋敷氏は力強く語るのだろう。

NHN Japan株式会社 ウェブサービス本部 開発1室 サービス開発2チーム 堀屋敷勉氏

LINEが1番になるまでの道のり

 いまやスマートフォンアプリにおいて、もはや一人勝ちのようなLINE。そんなにスピードにこだわる必要があるのだろうかと問いかけたところ、「逆に、ライバルはいないと思われているのは、スピードがあったからこそ、そう思ってもらえている」と稲垣さんは語る。

 「最初にLINEをリリースした時は、メッセージアプリとして後発でした。日本ではまだメッセージアプリはそんなに使われていなかったのですが、いかにそこからLINEが一番になるのかが命題でした。そのためには新しい機能をどんどん出しますって、ユーザーにアピールすることも必要でした。もちろん、バグがなくて安定して使えるメッセンジャーじゃないとユーザーは定着してくれません。それに素早く対応しつつ、かつマーケティングチームのメディアへのアピールの取り組みなどもあって、LINEが1番じゃないですかって今言ってもらえるんだと思います」(稲垣さん)

 リリース当初はシンプルなメッセージアプリだったLINEは、いまや無料通話に加えてホームやタイムラインの機能まで装備され、スマートフォンのプラットフォームになりつつある。

 「最初からメッセージだけで終わるつもりはなかったので、基本のメッセージ機能にプラスアルファでいかに機能を拡張していけるかですね。また、プラットフォームになるにはユーザー数がある程度いなければ難しいので、今は大きな絵に向かって走っている感じです」(稲垣さん)

ITリテラシーの高くない人たちをも魅了するサービスをつくる秘訣

 LINEは、いわゆるITリテラシーが高い人たち以外の層に大きくリーチしているサービスのように思う。インターネット業界で働くITに詳しい人たちが、ITリテラシーの有無に関わらず万人に受け入れられるサービスをリリースした秘訣はあるのだろうか。

 「エンジニアの観点からみると、幅広いユーザーに受け入れられるサービスであるためには、自分たちの感覚を固持せずに、企画の考えを尊重しますね」(堀屋敷氏)

 「ラインをリリースしてから、百万、何百万ダウンロードというようにユーザー数が増えていきましたが、その頃からネット業界の人というよりは、あまりITリテラシーの高くない人たちに多く受け入れられているという感覚は社内でもすごくありました。あえてその層へのリーチを狙っていたわけではないんです。ITリテラシーの高い人たちに使ってもらい、それから他の層に広まっていく。既存のマーケティングの王道のような広まり方を考えていました。

 私個人の分析だと、もともとリテラシーの高い人たちはすでにFacebookとかほかの代替手段を使っていることが多かったですよね。で、そういう人たちは、なぜFacebookを使っていたかというと、自分の日常の雑談をするというよりも、周りが見ていることを意識していて発信するというコミュニケーション。不特定多数の人に向けて、1対Nで発信して、答えてくれた人と会話をする。こういうコミュニケーションに慣れていると思います。

 逆にリテラシーの高くない人たちは、1対Nのコミュニケーションには慣れていなくて、『今日友達と何食べた、彼氏とこんなことがあった、どこにデートに行った』などの雑談は1対Nじゃないんですね。1対1で誰と話すか。LINEっていうのは密でクローズドなコミュニケーションなので、普段の生活であったことを話すツールとして、受け入れられたのだと思います。逆に1対Nで誰かが反応してくれるコミュニケーションに慣れすぎている、いわゆるITリテラシーの高い人たちにとっては、『LINEで誰と話すの?』という感覚なのかもしれません」(稲垣さん)

 普段メッセージで個別に話す相手との会話や関係性は、FacebookなどのSNS上でのコミュニケーションとは別ものなのだ。FacebookかLINEのどちらか、という二元論的な話ではなく、目的の異なるツールであり、使い分けるものなのだ。

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この記事の著者

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

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MarkeZine(マーケジン)
2012/10/29 15:22 https://markezine.jp/article/detail/16376

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