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シリアル・アントレプレナー柴田陽さんに「O2O」と「起業」について聞きました。

スポットライトCTOに聞く、ちょっとマニアックな位置情報のはなし。そしてO2Oの今後

「IMES」は屋内位置測位の本命になりうるのか?

柴田:しかし、「みちびき」も衛星なので屋内では電波が届きませんよね。ほかの技術に目を向ける必要がありますね。

株式会社スポットライトCTO 高橋 三徳氏
株式会社スポットライトCTO 
高橋 三徳氏

高橋:準天頂衛星システムでは、地上、主に衛星からの電波の届きにくい屋内における補完のシステムとして、「Indoor MEssaging System=IMES(アイメス)」というものが定義されています。IMESは衛星の電波が届きにくい室内にIMES発信器を設置し、そこから発信される信号を受信することよって位置を特定しようというもので、宇宙航空研究開発機構(JAXA) が開発を進めてきました。

柴田:通常のGPS衛星は、電波で精密な時刻の情報を発信し、複数の衛星から受信した時刻の時差を計算して位置を特定していますよね。

高橋:はい。これらの計算はかなり複雑で時間がかかります。そのため、携帯やスマートフォンなどではAssisted-GPS、基地局情報やWi-Fiスポットなどの情報を複合的に使用することによって、短時間で測位できるようになっています。

柴田:すると、IMESもGPS衛星に代わって時刻情報を発信する機械を設置するという発想でしょうか。

高橋:いいえ、IMESは時刻情報ではなく、発信器を置いた場所の位置をあらかじめ測位しておき、その緯度経度などの位置情報をGPSと同じ電波にのせて発信します。衛星からの電波の届かない屋内であっても、IMESからの電波が届く範囲であれば、複雑な処理をすることなく、正確な測位を可能にします。

柴田:屋外では衛星を使い、屋内ではIMES発信機を利用し、これらをシームレスに切り替えることによって、どこでも正確な位置情報を取得できるようにしようという仕組みですね。

IMESの問題点

高橋:しかし、IMESには大きな課題があります。IMESからの信号を直接受信できるスマートフォンは現在存在しません。別途IMESレシーバーなどを利用しなければならず、こちらも実証実験の域を出ません。電波の代わりに可視光などを使ったものも同様の問題があります。

株式会社スポットライト代表取締役 柴田 陽氏(撮影:キベジュンイチロウ)
株式会社スポットライト代表取締役 柴田 陽氏
(撮影:キベジュンイチロウ)

柴田:スマートフォンメーカーも、現時点ではIMESレシーバーの標準搭載には消極的と聞きました。

高橋:IMESは日本が主導して、国際的に普及させようと試みています。しかし、GPSと同じ電波を使うため、アメリカのGPS運用機関(Global Positioning Systems Wing:GPSW)の管理下にあります。現在は、実証実験として日本国内に限って利用できると定められています。こちらもスマートフォンなどで手軽に利用できるようになるのは、まだまだ先の話になりそうです。

柴田:そんなところにもアメリカの制約を受けているんですか。

高橋:GPSは軍事目的でアメリカが開発整備し、現在は民間に開放され世界中の誰もが使えるようになりました。多額の開発費は国防という大義名分で実現し、それを平和利用に転用することで国益にもなったわけです。

柴田:IMESはローカルなものなので、日本は独自にIMES送信機を普及させなければなりませんね。誰が普及させるのでしょうか?

高橋:GPSのように国防目的でIMESを普及させるというのは考えにくいでしょう。もしかしたら、大規模な商業施設では店内のナビゲーションシステムを作るなど、導入するメリットはあるかもしれません。しかし、中小店舗などではそういったニーズがそもそもありません。リターンが見えにくいインフラに投資することは考えにくいでしょうね。

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ビジネス面の課題、今ある技術を組み合わせること

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この記事の著者

柴田 陽(シバタ ヨウ)

店舗集客サービス「スマポ」を展開する株式会社スポットライトの代表を務める。バーコード価格比較アプリ「ショッピッ!」、タクシー配車アプリ「日本交通タクシー配車」「全国タクシー配車」など、数々のヒットアプリを手がけ、2つの会社を創業・バイアウトした経験を持つシリアルアントレプレナー。

東京大学経済学部卒業。戦略コンサルティング会社...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2012/11/30 13:00 https://markezine.jp/article/detail/16790

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