IT専門調査会社 IDC Japan 株式会社は、国内ITアウトソーシング市場における主要ベンダー10社のITアウトソーシング連結売上高、および競合分析結果について発表した。これによると、2007年3月期における国内ITアウトソーシング売上高トップのベンダーは富士通であり、以下、IBM、NTTデータ、NEC、日立が上位5社となった。
2006年3月期でのランキングと比べて、上位5社に変化はない。一方、6位~10位では、2006年10月にCRCソリューションズと合併した新生CTC(伊藤忠テクノソリューションズ)が10位にランクイン。また、上位5ベンダーでは、2006年3月期ではITアウトソーシング売上高成長率にばらつきがみられたものの、2007年3月期ではどのベンダーも1桁後半~10%超の高い成長率を達成した。逆に6~10位のベンダーでは、低成長にとどまるところもみられ、合併効果のあったCTCを除くと、ITアウトソーシングの売上が高いベンダーほどおおむね高い成長率となった。
上位ベンダーが売上高を伸ばした背景には、大企業を中心に情報システム構築への投資が拡大を続ける中で、これまでベンダーが手がけてきた構築案件が運用フェーズに入ったことや、地銀向けの基幹システム共同センターが順調に稼動行数を増やしていることなどがあるとIDCは分析している。ただし、市場全般としては案件の小型化、サービスの標準化などが継続しており、ユーザー企業における不満もサービス価格に対するものが比較的高くなるなど、ベンダーにとっては厳しい状況が続いている。
ITアウトソーシングサービスのコモディティ化や価格競争の可能性がある中で、ベンダーの収益性低下も懸念される。こういった状況を回避するためにも、ベンダーは顧客満足度向上と収益性の確保を両立させる必要がある。
「現在ユーザー企業のITアウトソーシングの導入目的は、主にコスト削減などに向いているが、ベンダーはITアウトソーシング導入による情報サービス全体の戦略見直し、ユーザー企業の本業強化など、新たな価値提案を行っていく必要がある。同時に、最適な粒度でのサービス提供や事前のコンサルテーションによる顧客ごとのニーズに合わせたサービスの組み合わせなど、標準化とカスタマイズを両立するようなサービス提供を心がけることで、ユーザー企業からの信頼を勝ち取っていくべきである」とIDC JapanのITサービス担当グループマネージャーの寄藤幸治氏は述べている。
参照:【レポート概要】2007年 国内ITアウトソーシング市場 ベンダー競合分析:2007年3月期