広告主は「全体最適」を求めている
MZ:最後の質問になりますが、広告主企業、テレビ局、広告代理店を含めて、テレビに関わる業界全体が抱えている課題についてはどのように見ていますか?
尾関:いま広告主は「全体最適」を求めていると思います。「部分最適」ではなく。デバイスが分散化・多様化してくるときに、新しくスマホが出てきたから「スマホでこういう企画がありますよ、これ使ったほうがいいですよ」と提案するのではなく、トータルで広告主企業の商品やサービスのコミュニケーションをどうとらえるか、という考え方をしてほしい。そのことにきちんと向き合うなかで、新しいデバイスやサービスでこういうことができますよということであればいいよね、そう広告主企業の方々は考えていると思います。
我々も広告主企業のニーズに対応する新しいサービスを考えなければならないので、キーワードは「全体最適」です。それをかたちにしたのが「New ACR(Audience and Consumer Report)」なのですが、今年実験して2014年から本番サービスに入ります。

MZ:広告会社については、どんな課題があるでしょうか。
尾関:広告会社さんは、広告主に近い立場、メディアに近い立場でそれぞれ課題があります。広告会社独自の機能として、クリエイティブとキャンぺーンプラン。このふたつが全体最適のなかでどれだけ刺さるか、新しいツールをどれだけうまく活用できるか、テレビメディアの価値を高められるかだと思います。
MZ:大企業でも、テレビとネットのどちらにどれだけ広告予算を投下したらいいのかということで、非常に頭を悩ませている部分があるようです。
尾関:いま日本の広告費で一番多いのはテレビで、その半分くらいがインターネットになったというファクトがある。そうなるとそのふたつの最適化を考えるというのはひとつのテーマです。
我々の同一サンプルでテレビとネットの関係がわかる実験調査も、そのためにやっています。なかなかすぐに答えは出ないと思いますが、そういうところをやっていかないと、ビデオリサーチもだめなんじゃないかと思っています。今回のイベント「VR FORUM 2012」の意味もそこにあります。
MZ:イベントが無事に終了して、反応はいかがでしたか?
尾関:イベントの評判は良かったんですが、ここで宣言したことをこれから具体的にかたちにしてかなければならない。ビデオリサーチがデータサービスの会社として、ユーザーの方に「これいいよね」と言っていただけるようにどこまでできるのか。いま、その部分を考えています。
MZ:次の50年へ向けて、すでに動き始めているのですね。今日は貴重なお話を、ありがとうございました。