利用量の多い写真は「ナチュラル」「自然体」
「やはり、ソーシャル時代のヴィジュアルというと、ケータイカメラの影響は無視できませんね。それによって、かつてない量の写真が撮影され、シェアされています」(島本氏)
「特に、Instagramが大きかったと思います。ヴィジュアルを表現してつながることが、Instagramによって一気にトレンドになった実感があります」(井口氏)
ここで島本氏は、ゲッティ イメージズで利用されているイメージ素材の傾向から、このようなソーシャルネットワークによって起きている現在のトレンドには、以下の3つがあると提示する。
1. インスタント・ノスタルジア(Instant Nostalgia)
Instagramが流行したのは、セピア色に見えるようなレトロな写真を簡単に撮れることも大きかっただろう。写真自体のクオリティーは高くないが、見ている人が自分も参加しているような気持ちを起こさせる写真、親近感や懐かしさを覚える写真が、ひとつ目のトレンドだ。
「レトロな雰囲気だったり、被写体がこちらを向いていない、日常生活の一瞬を切り取ったような写真だったり。恣意的でないからこそ撮れるものに、注目が集まっています」と島本氏。ゲッティ イメージズでは写真共有サイト「Flickr」と提携し、こうした写真を多く集めているという。
2. アンチ・ヴァニティ(Anti-Vanity)
アンチ・ヴァニティとは、飾らないという意味。2つ目のトレンドとして、飾らない、完璧ではない素材が挙げられる。例えばFacebookのプロフィール写真に、ポートレートというよりはちょっと笑える写真が多く使われているのも、この傾向によるものではないかと島本氏。
「以前と比べて、リタッチしすぎない写真が広告で使われるようになってきているのも、この傾向に合致すると思います。少し前に、ある化粧品メーカーの広告が、モデルをリタッチしすぎていることで『誇大広告だ』と批判を受けた一件がありましたが、それを逆手にとって『まったくリタッチしていません』と添えて生の写真を広告に使ったメーカーもありました。ナチュラルで自然体な感じがするほうが、トレンドになっています」。
3. リアルモデル(Real Model)
3つ目のトレンドは、リアルモデル。これは2つ目とも関連するが、ファッションモデルのようにスリムな人ではなく、健康的なイメージを与える普通の体型の人をモデルに起用することが多くなっている。
「人物イメージの写真には、若い人の写真が使われることが一般的でしたが、最近では年配の元気な方の写真もけっこう売れています。このトレンドは海外では比較的長く、6、7年前から続いている印象がありますね。ゲッティ イメージズの検索キーワードには、こうした新しいトレンドのワードを随時足していますが、リアルモデルも加えています」(島本氏)