米スバル、クラウドソース型プレイリストで初運転の記憶を呼び起こす

最後に紹介するのは、米スバルが実施した「First Car Playlist」キャンペーンです。このキャンペーンは、はじめて運転した車のストーリーをユーザーが共有する一大プロモーション「First Car Story」の一環として行われました。
デスクトップアプリにログインしたユーザーは、はじめて運転した頃の音楽や運転にまつわる思い出の一曲を投稿し合います。投稿された楽曲はスバルの特別なブランド・プレイリストに統合され、ひとつの大きなSpotifyプレイリストを作っていきます。ユーザーはクラウドソースでプレイリストを作り、同じブランドの車のドライバーどうしで音楽を共有することができるのです。
このキャンペーンでは、ユーザーは特別な思い出のある音楽を聴きながら、はじめて運転したスバルの車や過ごした時間を思い出し、プレイリストを通じてブランドのファンどうしで思いを共有し合います。これによって、パーソナルな側面でもブランドコミュニティとしてもスバルへの関与度を高めることに成功しました。First Car Playlistを実施した結果、スバルのブランド・プレイリストの平均視聴時間は70分以上にものぼり、クチコミによる拡散にもつながったことで、キャンペーンは成功を収めました。
Spotifyを使った次世代音楽マーケティングは始まったばかり
Spotifyを使った音楽マーケティングやブランディングは、ここで紹介した企業以外にも数多く行われています。どの企業も音楽とネット、ソーシャルをシームレスに連携させて、消費者が参加しやすいかたちで音楽体験を実現しています。このことからも、Spotifyは人のつながりや感情といった情報を深く理解し、企業のマーケティング戦略を拡張してくれる良きパートナーになるでしょう。
Spotifyはまだ日本で活動を始めていないこともあって、なかなか具体的な動向や企業との関係が見えづらい現状があります。しかし、今回紹介した事例などが証明しているように、Spotifyは音楽ソーシャルネットワークとして、そして音楽マーケティングのパートナーとして、これまでにない付加価値を企業戦略にもたらしてくれます。ここで紹介した事例が今後増えるであろう音楽マーケティングの参考になれば嬉しく思います。
「次世代音楽マーケティング」というカテゴリーはSpotifyとともに始まったばかりです。筆者は、今後Spotifyが日本に上陸したときには、数多くの日本企業が音楽を使ったマーケティングを検討し、実施してすることを切に願っています。