Spotifyが拡張する次世代音楽マーケティングとは?
音楽は多くの人にとって最も親しみやすいコンテンツです。その音楽を使って企業が行なってきたマーケティング活動といえば、みなさんもご存知のとおり、広告でのタイアップが最も代表的な施策です。これまでは一定の成功を収めてきましたが、情報量が急速に増加している今、本気で消費者と接点を構築しブランド価値を高めるためには、一方的な広告施策で人を振り向かせることが難しくなってきました。
そこで、幅広く一般消費者に企業が歩み寄るアプローチとして、音楽サービスを使った次世代マーケティング活動が浮かび上がってきます。音楽を通じて、これまでにない新しい体験をネットでそしてソーシャルで体感してもらうことで、的確なターゲット層にブランド体験を届け関心を持ってもらう機会を創出するという、新しい消費者との関係構築の手法が生まれ始めています。
今回は、Spotifyを使ったこれまでにない音楽マーケティング施策で、どのように世界の企業がブランド価値を高めているのかを紹介したいと思います。
業界最大手コカ・コーラとSpotifyの歴史的提携
まずはじめに紹介するのは、清涼飲料最大手のコカ・コーラの事例です。2012年4月、コカ・コーラはSpotifyと戦略的パートナーシップを発表しました。このパートナーシップでは、コカ・コーラとSpotifyが実施する世界的な音楽マーケティング・キャンペーンにおいて、ウェブサイトやFacebookアプリなどにSpotifyを音楽プラットフォームとして独占的に組み込むことについての合意がなされました。コカ・コーラにとって、これだけの規模の提携は、音楽の分野では前例がありません。
コカ・コーラは今後、同社がスポンサーとなるグローバル規模のイベント(オリンピック、サッカーW杯など)やさまざまなキャンペーンにおいて、Spotifyをデジタルパートナーとして音楽をマーケティング活動に組み込んでいきます。また、この提携ではSpotifyがサービスを展開する国におけるコカ・コーラのローカルなマーケティングにも音楽サービスを統合したデジタル戦略が実施されることを意味しています。
コカ・コーラはこの提携を戦略的マーケティング・パートナーシップと捉えているところが特徴的です。提携に合意した理由のひとつには、Spotifyが持つ強力なソーシャル連携があり、音楽ファンが会話をする場所に参加したかったとコカ・コーラのグローバル・エンターテイメント・マーケティング担当者は語っていました。
音楽を通じて思い出を共有する「Share a Coke and a Song」キャンペーン
では、両社の提携は具体的にどのようなキャンペーンを生み出したのか、その事例を紹介します。ひとつ目は、コカ・コーラがグローバル規模で実施している「Share a Coke and a Song」キャンペーンです。このキャンペーンは日本でも現在実施されているので、ご存知の方は多いと思います。海外では、コカ・コーラは同キャンペーンの音楽プラットフォームにSpotifyを利用して実施しています。
消費者は特設サイトにログインして音楽を友人とシェアする代わりに、サイトまたはFacebookアプリからSpotifyを通じて友人に音楽を贈ることができるようになっています。コカ・コーラのブランドにより深く関わってもらうキッカケとして音楽を使ったことが、このブランドキャンペーンの大きな特徴です。年代を問わず幅広い層の人たちが参加し、体験を共有する。Spotifyの持つ膨大な音楽カタログによる訴求と強力なソーシャル連携を最大限に活かすことで、キャンペーンの円滑な成功へとつながりました。音楽を通じて友人知人と思い出や時間を共有する。Spotifyによってそんな新しい音楽体験をさらに拡大することができるのです。