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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Autumn

石谷聡史と考える統合マーケティング・コミュニケーションの未来

「創造的なことには、リスクがあって当然」 ─ 原野守弘氏


その商売は正直か。ノーと言える勇気があるか

 ―― 他にも、101種類から選べるマルイの「EPOS DESIGN CARD」なども原野さんの代表的な仕事ですよね。

 そうですね。クレジットカードはいつも使う1枚が決まってしまいがちなので、それを覆すために愛着を作り出そうと、たくさんの種類をデザインしました。この企画は今でも継続されています。

 ほかにもドリル(電通とADKの合弁会社)時代に手がけた、タカラトミーのリカちゃん40周年キャンペーン「リカ ワールドツアー」も印象的な仕事でした。コンセプトを「新・女の一生」と立てて、従来の家事体験のごっこ遊びではなく、家事も男女も関係ない旅行体験を演出しました。

 広告業界のマーケティング・サービスの技術も進化していますが、商品を見つめ直さずにそれだけで埋め合わせをしようとするのは、ときに大きな無駄を生んでしまいます。商品自体の物語性を見出したり、また与えたりしてそれを軸に広告までを統合すれば、あまり無茶しなくていいんです。

 ―― お話を伺っていると、商品にすごく真摯に向き合っているから、商品の物語性をどう活かすかという発想になるし、本質的な課題解決からもぶれないのかなと感じます。

 なんていうか、正直さというのがすごく大事だと思うんです。広告会社やクリエイターがクライアントに正直であることもそうだし、クライアントが自社の顧客に対してというのも。

 その良し悪しを問うわけじゃないんですが、日本の会社はこれまで積み重ねてきた合議的な仕組みというか、多数決で物事を決めるのが一般的で、正直でいられないことも多い。でも、僕はダメなものはダメと明確にすることが必要だと思います。正直であり続けるのはラクな道ではないけど、商品が最もいい形で世の中に届くのに、実は最善の戦略じゃないかと。

 ―― 言われてみれば、絶対に譲れないところが多数決で消えてしまったり、折衷案で企画が丸くなったりすることも組織の中では起きてしまいますね。

 それが今、結構危ないなと思っています。言ってしまえば、正直じゃない商売ということになるわけだから。チーム内でもクライアントに対しても、伝え方はともかく「ノー」と言える勇気が必要だと思います。やはり、多少の衝突はあってもときにオリエン内容自体を検証して、商品をつくり上げるプロセスから僕らも参加できればと思うんです。

 ただ、経済環境のせいもあって、今は広告主も広告会社も衝突どころか「企画がなるべく失敗しないように」というリスクヘッジ型の姿勢になってしまっている傾向はありますね。

 ―― 今はどのキャンペーンでもKPIを設けたりしていますが、原野さんは効果検証についてはどうお考えですか?

 ―― 言われてみれば、絶対に譲れないところが多数決で消えてしまったり、折衷案で企画が丸くなったりすることも組織の中では起きてしまいますね。

 それが今、結構危ないなと思っています。言ってしまえば、正直じゃない商売ということになるわけだから。チーム内でもクライアントに対しても、伝え方はともかく「ノー」と言える勇気が必要だと思います。やはり、多少の衝突はあってもときにオリエン内容自体を検証して、商品をつくり上げるプロセスから僕らも参加できればと思うんです。

 ただ、経済環境のせいもあって、今は広告主も広告会社も衝突どころか「企画がなるべく失敗しないように」というリスクヘッジ型の姿勢になってしまっている傾向はありますね。

 ―― 今はどのキャンペーンでもKPIを設けたりしていますが、原野さんは効果検証についてはどうお考えですか?

 確かに、今はKPIのような指標は常に求められるので、僕がプレゼンするパートに設けていなくても営業担当とクライアントで話し合ってもらったりして、必ず入れています。

 でも、考えてみればKPIだってリスクヘッジ的な概念ですよね、これを超えたら成功だと最初に決めてしまうわけだから。KPIありきの企画は、説明責任は果たせるかもしれないけど、KPIが正直さより前に来てしまったら本末転倒。本当に大事なチャンスが失われる場合があると思います。

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創造的なことには、リスクがあって当然

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この記事の著者

石谷 聡史(イシガイ サトシ)

株式会社電通 プラットフォーム・ビジネス局 コミュニケーション・プランナー

さまざまな企業の統合マーケティング戦略のコンサルティング・プランニング業務を行なう一方、コンタクトポイント・クロスメディア・PDCAなどマーケティング・コンバージェンスに関連する新しい手法開発にも従事。『クロスイッチ-電通式クロスメディアコミュニケーションのつくりかた-』(ダイヤモンド社)やクロスイッチを元にした英語書籍『The Dentsu Way』(McGraw-Hill)を中心となって企画・執筆。中国・韓国・タイでも翻訳本が出版される。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2014/10/29 14:11 https://markezine.jp/article/detail/17856

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