リスティング広告とテレビCM、投資効率の比較
さらに、ここまで紹介した手法を用いる際に投資回収曲線を加味することで、より精度よく(もしくは実感に近く)未来に対するシミュレーションをおこなうことができます。
縦軸にコンバージョン数や売上をとり、横軸に各媒体の投下金額をとってグラフにすると面白いことが分かってきます。
例えば、インターネット上で商品購入などが完了するEC系サイトなどに多いのですが、投下金額が比較的少ないうちは、テレビCMよりもリスティング広告の方が高い投資効率になるのですが、ある一定金額を超えてくると、図にあるように、テレビCMの方が高くなったりします。
リスティング広告は刈り取り型の広告といわれます。いまそこにある顕在化したニーズを刈り取るのには適しているわけです。それは比較的少ない金額でできます。しかし、顕在化したニーズをほぼ刈り取ってしまうと、そのあとは金額を増やしていくにつれて刈り取り効率が下がってしまうのです。そのような点まできた場合に、さらに売上を伸ばしていきたければ、リスティング広告やバナー広告などよりもテレビCMの方が効率のよい場合があるのです。
私の経験では、ウェブマーケティング偏重型の広告主にこのようなケースが多いです。簡単にいえば、認知が不足しているのです。とくに、非助成第一想起が不足しているケースです。このような場合は、ブランド認知を高めていくことが必要です。やや長期的に視点に立って、刈り取り型以外のマーケティング施策をおこなっていくことが大事になってきます。それは、テレビCMなどのマス広告もありますし、イベントなどの企画や戦略PR、YouTubeなどの動画、SNSなども含まれますが、とにかく、刈り取り効率だけを追求していると、一定の規模以上に売上が伸びないことはたしかでしょう。
オフラインアトリビューションに積極的に取り組む米国企業
さて、今回ご紹介したオフラインアトリビューションはアメリカでは大企業を中心にかなり浸透してきているようです。この分野のマーケットリーダーは、マーケットシェア社で、日本にも進出してきています。ちょうど、「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー」(2013年7月号)で広告特集が組まれていて、マーケットシェア創業者兼CEOのウェス・ニコルズ氏が「広告アナリティックス2.0」というタイトルで記事を書いています。アメリカでの状況に興味がある方は、ぜひ読んでみてください。
これまでの連載で、アトリビューションが必要となってきた背景やコンバージョンのダブルカウントの問題、オンラインアトリビューションにおける3PASの優位性、そして、オフラインアトリビューションの基本的な分析手法などを紹介してきました。この連載も今回のこの記事で最後になります。一連の記事をお読み頂ければ、アトリビューションの基礎的なことを理解できるようにわかりやすく説明してきました。少しでも読者のみなさまのお役に立てていれば嬉しく思います。この連載では書き切れなかったこともありますので、別の機会に紹介できればと思います。

