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次世代広告コミュニケーションの秘訣

絶対の正解は存在しない?ブランデッド・コンテンツの作り方の秘訣

売上前年比9%アップを記録したブランデッド・コンテンツの成功事例

 さて、今回も、具体的な事例をひとつ、ご紹介しましょう。2008年カンヌ国際広告祭フィルム部門グランプリ受賞作で、各方面で物議を醸し出した作品です。テレビCMとしても放映されましたが、充分に「ブランデッド・コンテンツ」と呼んで良い事例です。

「Cadbury's Gorilla Advert」You Tubeより 

 それは、簡単に言ってしまうと、ゴリラがドラムを叩いているだけの90秒の動画です。商品はキャドバリー・デイリーミルク(Cadbury Daily Milk)というチョコレート。長い伝統を誇る商品で、日本で言えば、明治ミルクチョコレートやロッテ・ガーナチョコレートのような存在だと思われます。メッセージは一応明示されてはいるのですが、商品スローガンでもある一杯半たっぷりの楽しさ(a glass and a half full of joy)だけになります。分かったような、分からないような?そんな感じがしませんか。

 この商品スローガンが意味するのは、商品パッケージにも描かれているミルクのこと。一杯半たっぷりのミルクを使ったおいしいチョコレートだ、というメッセージのようです。

ゴリラが気持ちよさそうに、ドラムを叩いています。

 この動画は、ドラマー兼シンガーとして有名なフィル・コリンズの名曲に乗って始まります。最初に「a glass and a half full production」の文字。商品スローガンをもじった架空の制作会社によるショートフィルムであるかのようなつくりになっているわけです。次に映し出されるのは、ドラムセットに陣取ったゴリラ。瞑想するように、息を吸い込みます。曲が盛り上がり、ドラム演奏が始まるちょうどそのタイミングで、おもむろにドラムを叩き出すゴリラ。カメラは、気持ちよさそうにドラムを叩くゴリラを捉えたままエンディングへ。商品スローガン「a glass and a half full of joy」とチョコレートの商品パッケージが映し出されて終了。全体で、全部で、これだけです。

ぬいぐるみのパロディー版、かわいいです。

 ただこれだけの動画が、YouTubeやメーカーの自社ウエブサイトを中心に大きな人気を博し、またたくさんのパロディが登場することで話題化、商品の売上げ自体も、この手の定番商品としては異例の、前年比9%アップを記録しました。「ブランデッド・コンテンツ」の大成事例と呼べるでしょう。

 そして、この事例は、先ほど提示した「ブランデッド・コンテンツ」のポイントを、ことごとく満たしていることに、もう皆さんもお気づきのことと思います。

 3回にわたって、「ブランデッド・コンテンツ」についてお伝えしました。「ブランデッド・コンテンツ」の活用は、これからのマーケティング・コミュニケーションにとって、不可欠の要素だと思います。この連載が、皆さんの「ブランデッド・コンテンツ」の理解と制作のヒントに、少しでもなり得たことを切望しています。

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この記事の著者

佐藤 達郎(サトウ タツロウ)

多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論/メディア論)。2004年カンヌ国際広告祭フィルム部門日本代表審査員。浦和高校→一橋大学→ADK→(青学MBA)→博報堂DYMP→2011年4月 より現職。
受賞歴は、カンヌ国際広告祭、アドフェスト、東京インタラクティブアドアワード、ACC賞など。審査員としても、多数参加。個人事務所コミュニケーション・ラボにて、執筆・講演・研修・企画・コンサルなども。また、小田急エージェンシーの外部アドバイザー、古河電池の社外取...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2013/06/14 10:00 https://markezine.jp/article/detail/17942

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